この本を読んだ時、オレはハルキストが心配になったんだ。

「走ることについて語るときに僕の語ること」 村上春樹

ハルキストとは村上春樹の熱狂的なファンの通称だ。

著書全てを読んでいるのはあたりまえ、その生活スタイルも村上春樹本人のだったり、小説内の世界に強く影響されている人たちのことを、そう呼ぶらしい。
それはマラソンだったり音楽だったり映画だったり海外文学だったり。

じゃなにか?ハルキストはみんながみんな、サロマ湖ウルトラマラソンを走ってるってのか?100キロだぞ100キロ。
そう心配になるのも無理はないだろう。


この本の中で、強く印象に残るエピソードの一つに、村上春樹がサロマ湖ウルトラマラソンで100キロ完走した話があるからだ。村上春樹のマラソン人生のなかでも、印象深いできごとだったと書かれている。

もう、走るしかねーだろ、ハルキストは。

いや、フルマラソンまでならまだしも、ウルトラいっちゃうとね、もう大変だ。100キロだぞ100キロ。そのへん、ハルキストはどう思っているのだろうか。それはまた別の話だ、とでも言うのだろうか。


しかし、事はそれだけでは終わらない。

サロマ湖ウルトラマラソンで100キロを走ったことで、村上春樹は走ることに、それまでのように熱意を持てなくなってしまうんだ。
わかるよ、わかる。オレもフルマラソン走った後は、しばらく「二度と走るかボケ」そう思って、なかなかトレーニングを再開できないからね。

で、走ることにあまり熱意を持てなくなった、村上春樹はどうしたか。

トライアスロンを始めるんだ。

水泳と自転車とマラソンのアレだ。完走したものはアイアンマンとか呼ばれるアレだ。(距離にもよるが)

よりにもよって、トライアスロンだ。


ハルキストはトライアスロンも始めたのだろうか。
いや、オレ、ハルキストのことは全然知らないんだ。主にどんな人たちなのか。でも、やっぱり、どっちかていったら、そりゃ「文系」が多いんじゃないか?スポーツとあまり縁のないような。

その人たちがやるかね、トライアスロン。

いや、別にまったく全てのことに影響されて、取り入れるわけじゃないと思うよ。
それでも、やっぱり、できるだけ村上春樹に近づきたい、そう思えば始める人もいるんじないか?
そう思って心配になったものだ。


この本は、タイトルを見てもわかる通り「走ることについて」書かれた本だ。
小説ではないよ。エッセイみたいやつだ。
本書の中では一種のメモワールである、と言っている。
ま、ちょっとした自伝のようなものとして位置づけているとのことだ。

村上春樹にとって「走ること」は「人生」そのもの、らしい。
走ることからすべてを学べるし、小説を書くために走っている、
みたいなことも書いてある。

村上春樹に比べれば、オレなんか超市民ランナーになるわけだが
しかしこの本に書かれてる「走る」ことに対する考え、レース中の思いなんかは
いちいち納得する言葉ばかりだ。「そうそうそうそう!」って。

一番印象に残った言葉は、これかな。


「走る理由はほんの少ししかないが走らない理由はトラックいっぱいにある」


村上春樹 「走ることについて語るときに僕の語ること」より




ホントいっぱいあるよね、走らない理由(笑)

雨降ってきた、寒い、暑い、熱中症にでもなったら大変だ、なんか足痛い、今は無理しないほうがいい、逆に休んだ方がレースで調子いいんじゃないか・・・などなどキリがない。


この本を開くと、毎日コツコツと走る
村上春樹いがいる。

その姿は、オレもまぁがんばって走ろうかな、村上春樹も走ってるんだ。いつもそう思わせてくれる。だから、走るのが嫌になった時は、この本を開くんだ。

やっぱり名場面は、サロマ湖ウルトラマラソンで100キロ完走するところなんだけど
途中、苦しい時に唱えた言葉はオレの中で大好きな「名言」だ。

「僕は人間ではない。一個の純粋な機械だ。機械だから、なにも感じる必要はない。前に進むだけだ。」

村上春樹 「走ることについて語るときに僕の語ること」より


関連記事:マラソン 苦しい時に思い出したい「名言」10+2個

オレもよくレースの時は唱えている(笑)


あと、ある意味「老い」を受け入れるしかない、みたいな言葉も印象に残ったな。
そうだよな、って。
マラソン大会に出ても、
どうしてもタイムが伸びなくなってきて、そう考えたそうだ。


はじめは、どうしてかな、といろいろ悩んだそうだが
誰しも老いていくんだ、そう考えたら楽になったそうだ。

いろいろ受け入れることは大事だよな、そう思えた本だ。
あきらめる、とは違った意味での「受け入れる」だ。

走るのが嫌になったときに、ぜひ。


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「チーム」 / 堂場瞬一

「違う自分になれ」 / 岩本能史

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