
はじめてマラソン大会に出る人に、こんな忠告をしたら不安になるだろうか。
「レース中、様々な罪悪感がキミを苦しめることになる」
忠告というか、もはや脅しだ(笑)
「マラソン」と「罪悪感」がすぐには結び付かない人もいると思う。
勘のいい人だったら「交通規制」「ゴミ問題」くらいはすぐに頭に浮かぶかもしれない。
しかしそのことではない。
確かにマラソン大会のための「交通規制」で不便を強いられる人には申し訳ないと思うし、給水時の使用済み紙コップの「ゴミ問題」も対策を急がねばならない。
とはいえ、それらは自分一人でどうにかできる問題でもない。そのことで罪悪感を感じる必要もないだろう。まずは個人レベルでマナーの向上に努めようじゃないか。
今回問題にしたいは、気の利いたリアクションができないことで生じる「罪悪感」だ。
何を言っているのかわからないと思う。
例えば応援に対してだ。
沿道で応援してくれる人に気の利いたリアクションを返すのは難しい。
フツーに「ありがとうございます!」って答えればいいだろ、そう思うかもしれない。
しかし、事はそう単純じゃない。
例えばこんな応援があったとき、どうリアクションするのが正解なのか。
あえて愛情をこめて「クソ」をつけさせてもらうが、たぶん70代であろうクソジジィが缶ビール片手にうひょうひょ言いながら
「ほら!ちゃんと走れよ!」
なんて大声で叫んでいたら、それにどうリアクションを返すのが正解なのか。
先日走った北海道マラソン2018において実際に起こった出来事だ。13km地点くらいだったと思う。
これを「応援」と捉えるべきかどうかの別の問題も生じてくるが、まぁ、大きく捉えれば「応援」だろう。
いや、わかっているんだ。クソジジィ精いっぱいの愛情のこもった応援であることは。
しかしその時、少なくともオレの目の届く範囲のランナーは全員その応援を無視していた。
無理もない、酔っ払いのクソジジィに関わっても、いいことなんか一つもないに決まっているからだ(笑)
しかし理由はそれだけではない。
そのクソジジィは通りの向こう側で「ほら!ちゃんと走れよ!」と叫んでいたんだ。
せめてこっち側にいろよ。
そこは割と道幅の広い幹線道路でさ。
ランナーが走る側にいるならまだしも、車線を挟んで向こう側の歩道でクソジジィは叫んでいたんだ。缶ビール片手に。日曜日の午前中から。
実はオレの中で「正解」のリアクションはあったんだ。
大声でこう叫び返すのが正解なんじゃないかな。もちろん愛情をこめて。
「うるせーぞ、クソジジィ!」
だけど、そう叫ぶことはなかった。
なぜなら、周りのランナーにオレが危険人物だと思われたくないからだ。その代わりにオレの中に「罪悪感」が芽生えることになる。
「ごめんよクソジジィ、せっかく応援してくれてるのに全員で無視して」って。
あるいはハイタッチでの応援に対するリアクションだ。
沿道に子供たちが列を成して片手をあげている。その先頭に親御さんだろう「ハイタッチどうぞ」というプラカードを掲げて立っている。
「イェーイ」とでも声を出してハイタッチして通りすぎればいいだけだ。
元気ももらえるし、子供たちも喜んでくれるかもしれない。
でも、それは簡単なことじゃない。日本人の日常にハイタッチは馴染んでいないからだ。シャイなランナーも少なくない。
さらにオレなんかは
「こんな汗まみれの汚いオッサンにハイタッチされたってうれしくないだろう」
そう思って躊躇してしまう。
ハイタッチするどころか、逆にそこを避けるようなコース取りをして通り過ぎてしまう。
罪悪感だ。
せっかく子供たちが応援してくれているのに。
仮装ランナーに対するリアクションにも要注意だ。
仮装ランナーは基本的に人気者だから、沿道から応援の声は多い。だから一緒に走るランナーがそれに対してリアクションする必要はない。おもしろい仮装を見て楽しんでいればいいだけだ。
ただ、沿道に応援の人がいない区間ではどうだろう。
それが起きたのは、今年6月にサロマ湖100kmウルトラマラソンを走っていた時だ。70km地点を過ぎた頃だったろうか。
沿道に応援する人が一人もいない田舎道だ。車の通りも少ない。あたりはシンとしている。
鳴り響くのはザッザッザッザッっという、引きずり気味のランナーの足音だけだ。
オレは心身ともに疲労のピークだった。
そんな時、オレの右後ろから足音が迫ってきた。ザッザッザッザッと。
狭い歩道を走っていたので、オレはできるだけ左側に寄って道を開けた。どうぞ追い越してください、と。
しかしその男性ランナーはオレの横までくると、追い越すことなく並走してきたんだ。
しばらく二人で並んで走った。
まずいことになったな、オレは疲労困憊状態の頭でそう思った。
なぜならその男はタイガーマスクだったからだ。
覆面を被っているだけじゃない。リングコスチュームのようなタイツにマントまで付けている。
全身タイガーマスクだ。
ただごとじゃない。
ウルトラマラソンの70km過ぎの疲労ピーク時にタイガーマスクと並んで走る。
疲れた脳がこの状況をうまく理解できない。タイガーマスクも苦しそうだ。
声をかけるべきだろう。
このおかしな状況を打破するために声をかけるべきだ。
「覆面苦しくないですか?」
いや、そんな無粋なことを聞いてはいけない。単純に「うわっタイガー!」っと驚いて見せるべきかなのか。佐山聡なのか三沢光晴なのかを問うべきなのか。
気の利いたリアクションが思いつかない。
オレはとても疲れていた。リアクションする元気なんてない。
いつの間にかタイガーマスクとは離れ離れになってしまった。一言も声をかけることができなかった。
罪悪感、だ。
ゴールした後だって油断してはいけない。
ボランティアの学生たちがキラキラしたとびっきりの笑顔で完走メダルを、完走タオルを手渡してくれる。それに対して感謝の気持ちを笑顔で大きな声で返せただろうか。
うまく笑顔をつくれなかった。
罪悪感、だ。
このようにマラソン大会に「罪悪感」は付き物だ。
だから忠告したい。
「レース中、様々な罪悪感がキミを苦しめることになる」と。ただ、この問題は次のような一言で解決することもできるから安心してほしい。
「考え過ぎだ」
関連記事「ランニング初心者はマラソン大会に出て「応援」を体験してほしい」
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コメント
コメント一覧 (8)
西野屯田通りのハイタッチ隊のみなさんは往路(18kmあたり?)では、「楽しそうだなー、でもなー。」ともじもじ通りすぎたのですが、復路(32kmあたり?)は、恥ずかしさよりも元気をもらった方が絶対いいと思ってさせてもらいました。
あれ、本当に元気出ますね、不思議です!
わかります!ハイタッチって元気もらえますよね!
と言いつつ、私は今回のレース中のハイタッチはすべて逃げてしまいました(笑)
ただ、ゴール後はボランティアの学生さんたちとハイタッチして心なごみました。
いつかは応援側にまわってハイタッチしたいな、なんてことも思います。
駅伝やってたんですね!すごい。
応援してる人に「応援足りねぇーぞー」
言ってみたい(笑)
応援してくれる人に積極的にからみたいとは思うものの、なかなか・・
駅伝だとチームのために、ってことでいつもより力をだせるのかもしれませんね。
でも逆にプレッシャーにやられちゃいそうですけど(笑)
最近流行ってるリレーマラソンくらいならやってみたいかも。
ユーモアに溢れるブログが好きです。
これからも楽しみにしています!
ありがとうございます!
そう言っていただけるとうれしいです。
ふざけたブログですが(笑)たまにのぞいてみてください!