人はどんな時に走り出すのか。何を「きっかけ」に市民ランナーになるのか。
趣味としてのランニングを始める「きっかけ」はなんだろう。
よく知られているのは「いつかマラソン走ってみたいな」と口にした人が、実際に走り出すことは、ほぼない、ということだ。
なぜならマラソンを走ることは簡単じゃないからだ。「いつか」くらいの覚悟で始められるものではない。
じゃあ、オレは一体どんな覚悟で走っているのか。ごめんなさい。覚悟なんてありませんでした。やっぱり走り出すのに覚悟はいらない。大切なのは「きっかけ」だ。
走り出す「きっかけ」を改めて考えてみたいと思う。
そう思ったのは、先日、なかなかセンチメンタルな「きっかけ」を聞いて驚いたからだ。そりゃまぁ、なくはないだろうけど、でもマジか!と思う「きっかけ」だったんだ。
失恋、だ。
30代の男性ランナーの話だ。
話が話だけに、そこまで詳しくは聞かなかったが、とにかく彼女にフラれた時に走ったのがランナーになった「きっかけ」だったという。
嫌なことを忘れるために走る。
有効な手段だと思う。オレも経験はある。
なにか嫌なことがあって、気持ちがモヤモヤしている時に走る。その走っている一時だけかもしれないが、嫌なことを忘れて無心になれる。
忘れるというか、走ること以外は考えられないほどに追い込めばいい。聞こえてくるのは自分の息遣いと足音だけだ。額を流れる汗が嫌な記憶を一緒に流してくれるかもしれない。うるせーわ。
その30代の男性ランナーも、いや、フラれたときはまだランナーではなかったのか。
フラれて落ち込んだ時、とにかく走ってみたというんだ。
走ってみたら気持ち良かったという。そして、思いのほかうまく走れたという。それを「きっかけ」にだんだん走るようになって・・今に至るというわけだ。今では立派なサブ4ランナーだ。
失恋が「きっかけ」でランナーになる。
果たしてそんなことがあるだろうか。いや、あったんだけど。
オレ相手にそんなウソを言ったって、なにもおもしろくないはずだ。事実なんだろうな。しかし、にわかには信じられないという思いもある。
だって、たとえば失恋した時、辛い思いを忘れるために酒を痛飲することはあるだろう。ビールから日本酒から手当たり次第に。そしていつもはあまり飲まないワインのボトルまで空ける勢いで。そのワインがたまたま口に合う、おいしいワインで。
それを「きっかけ」にソムリエになったやつがいるだろうか。
いない気がする。
それと同じくらい、にわかには信じられない。いや信じられないもなにも、本人がそう言ってるんだからそうなんだろう。
ということは、意外にみんなバラエティに富んだ「きっかけ」でランナーになっているのではないだろうか。
多くの市民ランナーは「健康のため」や「ダイエットのため」に走り始めたと思っていたが、違うのかもしれない。
そもそも、オレが走り始めた「きっかけ」は音楽フェスだ。
オレが20代も後半のころ、北海道は石狩で音楽フェスブーム皮切りの一つ、ライジングサンロックフェスティバルが始まって。
それに参加したとき、自分の体力の無さに愕然としたんだ。まだ、若かったオレはステージ前に攻めて行ったのだが、体力的に完全に周りの若者に負けていた。もみくちゃにされ押し込まれて。元高校球児のオレがなんてことだ・・それは悲しい出来事だった。そこまで体力が落ちているとは思わなかった。
それを「きっかけ」に走り始めたんだ。来年はもっとステージ前で攻めてやるぞ、と。オレにもそんな若いときはあったんだ(笑)だから、結局体力づくりってことにもなるけど。もちろん、今はそんな危険なことはしない。フェスはずーと後ろの方で観るに限る。限るってこともないけど。
他のランナーたちも、様々な「きっかけ」で走り始めて、そしてランナーになったのではないか。
人はどんな時に走り出すのだろう。
食い逃げをするとき。
食い逃げをするとき、人は走り出すのではないだろうか。
ところで、世の中で食い逃げ以上にダメな行為もないだろう。食って逃げる。そんなことをしてはいけない。
食い逃げをしてはいけない。
わざわざそんなことを書く必要があるだろうか。加えて言うなら、食い逃げを「きっかけ」にランナーになるのもいけないと思う。
先日はまだ、その「きっかけ」が失恋でよかった。よかってってこともないけど。これが「食い逃げ」だったらどうだろう。初めて会ったランナーに、走り始めた「きっかけ」を聞いたらこう答えるんだ。
「駅前の食堂でかつ丼食べてる最中に、お金を持ってないことに気付いてね」
いや、その先は聞きたくない。やめてくれ。たのむから近くのATMでお金をおろしてきてくれ。お店の人に正直に言えば待っていてくれるはずだ。たのむ。それを「きっかけ」に走り始めたらダメだ。
火事を見に行くとき。
そんなときも人は走り出すのではないだろうか。野次馬だ。いや、家が近かったりしたら心配だから見に行くな、とは言えないけど。
でも、やっぱりあまり褒められた行為ではない気がする。少なくとも走って見に行くようなものじゃないと思う。
話がどこかネガティブな「きっかけ」ばかりになってしまった。
もっとポジティブな「きっかけ」を考えてみたい。
「42.195km先にお金で買えない素敵なものがある」
オレがまだフルマラソンを走ったことがないときに、聞いた言葉だ。いつかそのプライスレスな素敵なものを手にしてみたいと思っていた。
フルマラソンに挑戦する「きっかけ」の一つだったと言える。
初めてフルマラソンを完走した時、それを見つけることはできなかった。
ゴールまで少々時間がかかり過ぎたせいだろうか。誰かが先に持っていってしまったのかもしれない。
それから何度か完走したが、それを見つけることはできなかった。
でもあるとき、気付いたんだ。あー、これだったのか、と。オレはすでにプライスレスな素敵なものを手にしていたのか、と。
たとえばゴール後に口にするキンキンに冷えたスポーツドリンク。こんなおいしいスポーツドリンクはコンビニには売っていない。プライスレスだ。
ゴール後にボランティアスタッフが首にかけてくれる完走メダル。メダル自体は別にいらないんだけど(コラ!)あの瞬間。メダルを首にかけてもらう瞬間の喜びプライスレス。
なんてことを言っても、コンビニに売ってるスポーツドリンクで十分だわ、って人が多いかもしれない。
「走った後のスポーツドリンクうめーぞ」って言っても、市民ランナーになる「きっかけ」としては弱いかもしれない。
でも、これだけは言っておきたい。
毎年8月に開催される真夏の北海道マラソン。そのゴール後に食べるジンギスカンはとてもおいしい。
ちなみに、今年2020年は東京五輪の影響で北海道マラソンは開催中止だそうです。残念!
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コメント
コメント一覧 (10)
あ、それじゃわかりませんね💦
その作者さんが出しているコミックエッセイ、とても面白くて全部買いました。そうしたら「マラソン1年生」というのも出ていて、マラソンを始めた顛末からホノルルマラソンまでが描かれていたのがきっかけです。
長い(笑)
さっそく「マラソン1年生」をネットで無料立ち読みしてみました(便利な世の中です)
これ、おもしろい!シューズとかウェア買うところから始まって、先がどうなるのか気になる。っつうか、アマゾンでポチりました(笑)
「マラソン2年生」とか「まんぷくマラソン旅」とかもあるんですね。おもしろそう。いい情報ありがとうございました!
「ロミオとジュリエット」のロミオと「シンデレラ」の王子…。(オペラだと四十男でもこうゆうことがあるのです。)どうあがいても無駄なのですが、せめてシルエットだけでも普通体型にならなければと。
結果、マラソンにドハマりしてしまいました。
オペラ?役作り?ロミオ?
まず確認したいんだけど、てっぺいって、オレの知ってるてっぺいだよね?
どういうこと?どうしてあなたはロミオなの?(笑)
ナナメ上にも程があるだろ!まったく知らなかったわ・・今度話聞かせて!
スルー出来ませんでした(笑)
初めまして。まったくの第三者なのですが、おかしくて。
「きっかけ」なんてほんと聞いてみないと分からないもんですね。
これをきっかけにシブケンさんがオペラ…
ゲストランナー君原さん!すげー!
はじめまして、コメントありがとうございます!
オレがオペラ!そっちきっかけ!
まぁ、でも、何がきっかけになるかわかりませんよね~
さすがにオペラはないと思いますけど・・(笑)
いや、わかります!私もGPSウォッチ買うまで、キロ何分とかほぼ意識したことなくて。
何キロ走ってるかもよくわかってなかったかな(笑)
それわかるようになったら、やっぱりやる気出ましたよね!