コロナ禍のニュースでよく耳にしたであろう「ライブハウス」。
感染拡大の初期に、いわゆるクラスターが某ライブハウスで発生してしまったことで、悪い意味で一躍有名になってしまった「ライブハウス」という場所。
それ以来、「ライブハウス」は「怖い場所」というイメージが付いてしまった気がする。
いや、以前から「怖い場所」というイメージはあったかもしれない。
昔ほどではないにしろ、タトゥーバリバリでトゲトゲのついた革ジャン着てモヒカンヘアーのロッケンローラーが集う場所、みたいな「怖い場所」というイメージを持つ人は少なくないのかもしれない。
そして、今回の新型コロナウイルスのクラスターだ。
やっぱり「ライブハウス」は「怖い場所」、のイメージが強くなってしまった気がする。
とはいえ、音楽が好きではない一般の人にとって、「ライブハウス」はそれほど馴染み深い場所ではないと思う。(あまりメジャーではない)ロックバンド系の音楽が好きでもない限り、行くことのない場所だと思うからだ。今だったら地下アイドルとか呼ばれる(あまりメジャーではない)アイドルのファンも行くことが多いのかもしれない。
それ以外の人は、「ライブハウス」がどんな場所なのか、詳しくは知らないような気がするがどうだろう。知らないから、より「怖い場所」というイメージを持ってしまうのではないか。
「知らない」は、「怖い」に繋がることはよく知られている。
それはとても残念なことだ。
もう、かれこれ30年近くアマチュアバンド活動をしているオレにとって(なにをやっているんだオレは)ライブハウスは大切な場所だからだ。
なんか知らないけど「怖い場所」だ、そう思われるのは残念なことだ。
果たして「ライブハウス」とはどんな場所なのか。この道30年の(どの道だよ)オレが「ライブハウス」とはどんな場所なのかを説明したいと思う。
「怖い場所」だ。
怖いのかよ!そう、怖いんだよ!
少なくともオレにとっては、とても怖い場所だ。もちろん違う意味で、だ。
その怖さと言ったら、タトゥー革ジャンモヒカンヘアーがかわいく思えるほどの怖さだ。
30年近くバンド活動を続けている今でも、ライブハウスのステージに立つと足が震えるほどに怖い場所だ。本番で緊張するからではない。さすがに30年近くやっていると、本番には慣れた。逆に「もうちょっと緊張しなきゃ」と思うほどにグダグダなことも多い(笑)
何が怖いのかって、リハーサルだ。
基本的に本番の数時間前にステージに立って、実際に演奏してリハーサルをやるわけだが・・そのリハーサルが怖い。なぜリハーサルが怖いのか?
昔、リハーサルでこっ酷く怒られたからだ。
それはオレが初めて!ライブハウスでライブをやった時の話だ。
バンドも始めたばかりで、何もかもがよくわかっていなかったころの話だ。
そのライブハウスの名は「札幌ペニーレーン24」という。ライブ好きの中では、全国に名は知れていると思う。プロのミュージシャンもライブをする、札幌でトップクラスのライブハウスだ。バンドを始めたばかりの、その辺のバンドマンが簡単に立てるようなステージではない。立ってはいけない。なぜなら、オレのように公開処刑されてしまうからだ。それついては、この後書く。
もちろん、お金を払って場所を借りれば誰でもステージに立てるのだが、ステータスの意味で、簡単に立てるようなステージではない、ということだ。
草野球チームがお金を払って甲子園を使うのと、高校球児が地区予選を勝ち抜いて甲子園に立つのはまるで意味が違うように。
しかし、オレはバンドを始めたばかりの、その辺のバンドマンだったのに「札幌ペニーレーン24」のステージに立ってしまったんだ。
オレが大学生のときに所属していた音楽サークル主催のライブがそこで行われたからだ。
その時のリハーサルが地獄だった。
ライブハウスのリハーサル。
それは何のためにやるのか、わかるだろうか?出演バンドの肩慣らし的な?そう思うかもしれないが、まったく違う。
その場の音を決定するために行われるのがリハーサルだ。
音楽のライブを観に行くと、客席後方にツマミやらボタンやらたくさんついた機械の前に座っている人がいるだろう。その人をPAという。会場の音を作る人だ。ちなみにPAとはPublic Adressの略だ。
え?音ってバンドのメンバー本人が作るんじゃないの?そう思うかもしれない。違うんだ。
細かいことは、ここには書かないけど、PAの人が作るんだ。
基本的な音は本人がつくるんだけど、最終的にお客さんお耳に届く音はPAの人が作るんだ。
リハーサルでは、まず、PAの人がバンドメンバーそれぞれの音を聴いていく。
「ドラム、音もらえる?」なんつってさ。ドラムが音を出す。次にベースが音を出して。って続いて。全てのメンバーが個々に音を出していく。そして最後にバンド全体で合わせて音を出す。
言わばバンドの自己紹介みたいなものだ。オレたちはこんな音出します、って。
その音を聴いてPAの人は、その会場に合った音を作って決定するというわけだ。
オレの担当はギターボーカルだ。
そのことについて何か言いたい人もいるかもしれないが、それについてはまた今度だ(笑)
とにかく、オレにとって初めてのリハーサルがやってきた。
「ギター、音もらえる?」ときた。
オレはギターをジャカジャカ弾く。それを聴いたPAの人が発した言葉にオレは戦慄した。
「ギターの音、それでいいの?」
呆れた口調で怒られたんだ。
エレキギターの音は、楽器のギターと音を大きくするアンプという機械で作る。それは簡単なことじゃない。
エレキギターの上手い下手は、テクニックではなく音だ、ともいわれる。イケてる音を作ることができれば、細かいテクニックはなくとも、ジャカジャーンと弾くだけでかっこいいギタリストになれるんだ。それは本当だ。
「ギターの音、それでいいの?」
これの意味するところは、おまえクソみたいな音出してクソみたいなギタリストだな、そういうことだ。そんな音を、このペニーレーン24のステージで鳴らすつもり?やめてくんないかな、そういうことだ。
オレは驚いた。
その当時、オレはライブハウスについて、よく知らなかった。知らなかったけど、こっちが料金を払うわけだし、演奏する側のオレたちがライブハウスにとっての「お客さん」だと思っていたんだ。だから、まさか怒られるとは思わなかった。しかも、サークルのメンバーやライブハウスのスタッフが大勢いる前で。ステージの上で。
公開処刑だ。とても恥ずかしかった。
その場をなんとかごまかし、次はバンド全体の音を出す段階になる。オレはギターを演奏しながら歌う。
それを聴いたPAの人が発した言葉にオレはまた戦慄した。
「ボーカル、まじめに歌ってもらえる?」
呆れた口調で怒られてしまったんだ。大勢の前で。とても恥ずかしかった。
言い訳させてくれ。
オレはライブのリハーサルがなんであるかを知らなかったんだ。だって、初めてのライブハウスでのライブだ。それこそ、本番に向けての肩慣らし的なものだと勘違いしていた。
それに加えて、オレのバンドは自分たちで作ったオリジナル曲を演奏しているんだけど、けっこうフザけた曲が多くて。そんな曲を「本番でもないのに」「お客さんもいないのに」、サークルのメンバーやライブハウスのスタッフの真剣なまなざしの前で(リハーサルはみんな真剣だ)フザけた曲をマジになって歌うのが恥ずかしかったんだ。その結果がこれだ。
「ボーカル、まじめに歌ってもらえる?」
公開処刑だ。
怖かった。震えた。逃げ出したかった。いや、マジで。その場の空気を想像してみてほしい。怖すぎるだろ?
このように「ライブハウス」とは「怖い場所」なんだ。
音楽を真剣にやっていない者にとっては、ね。なぜなら、ライブハウスの人たちは音楽に真剣だからだ。一流のライブハウスであれば一流のスタッフがいる。その人たちの音楽へのこだわりはハンパじゃない。当時のオレが(ま、今もアレだけど)公開処刑されるのも仕方のないことだ。
もちろん、フザけてるライブハウスもあるよ。「リハ、勝手にやっといて~」みたいな(笑)それはそれでアリだ。そういうのも、またいい。
↑フザけたライブハウス代表
でも、そういうところも、音楽には真剣だからね。
オレが知る限り一番ダメな人間がやっている札幌で一番ダメなライブハウス「161倉庫」。
— シブケン (@shibu_ken) May 10, 2020
コロナでピンチだ。いつもピンチだったような気がしないでもないが(笑)ものすごくピンチだ。なんか募金箱置いてあるっていうから遊びにいって入れてきたわ!がんばってくれよな。 https://t.co/LBmbozcOBo pic.twitter.com/MkaYfNqL51
↑フザけたライブハウス代表
でも、そういうところも、音楽には真剣だからね。
みんな音楽が好きだからだ。
オレも音楽が好きだ。だから、ライブハウスの人に怒られないようにしなければならない。
あの「公開処刑」以来、オレにとって、リハーサルが本番だ。リハーサルで本気を出す。
リハーサルでノドが枯れんばかりに声を出す。本番なんてどうなったっていい。いや、それはそれでダメだけど。
リハーサルで力を出し切って、もう本番やらなくていいわ、と思う日もなくはない。いや、だからそれはダメだろ。
だって怒られたくないから・・
だって怒られたくないから・・
そんな音楽が好きで、音楽に真剣な人たちの居場所「ライブハウス」が今、苦しんでいる。
新型コロナウイルスだ。ライブが出来ないんだ。収入源を絶たれている。
もちろん、ネットを使った配信ライブなんてものも始めたりはしているようだけど・・
プロのバンドのライブならまだしも、アマチュアバンドの配信ライブにお金を払う人は少ない。苦しんでいるようだ。
オレもクラファンとか募金とか、小さな協力はしているんだけど、それ以上のことはできない。
なんとか持ちこたえてほしいと思う。
自分の人生に「ライブハウス」なんて関係ねーよ、って人も多いかもしれない。
そんな人も、今後ライブ再開にGOサインが出たあかつきには、どうか無意味に「怖い場所」とは思わず、温かい目で見守ってもらいたい。
オレにとってはやっぱり「怖い場所」だけど。
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コメント
コメント一覧 (4)
私はジャズ系なのですが、復帰したい気がします、ライブに。(40年近く前以来)
ランナーって面白い経歴の人多いですね。
いやいや、魅力的だなんて・・もっと言って!(笑)
確かにランナーって面白い経歴の人多いかもしれませんね。
たぶん頭のおかしな人(いい意味で。もちろん悪い意味でも)が多いからでしょうね!
ジャズ、いいですね~私も演奏してみたいな。まったくジャズの知識はないですけど。
その後音楽の才能が(も)無いのが分かり音楽を止めました。
でもウチの妹は音楽の才能と努力できる才能があったので、ライブハウスをはじめ武道館などで演奏をするまでになりました。でも今はコロナで仕事が全然無いそうです…。
え!!!ぶ、武道館?!
プロのミュージシャンってことですよね?
いや、ビビるわ(笑)