小学5年生のときに転校してきたKくんのボストンバッグに、オレたちは動揺した。

某タレントのように、ボストンバッグにKくんがスッポリ入って頭だけ出していたわけではない。
なんの変哲もない、どこにでも売っているようなボストンバッグに勉強道具を入れてKくんはやってきた。
そのボストンバッグに、オレたちは動揺した。

クラスの中に、ランドセル以外のバッグを使っている者はいなかったからだ。オレたちは毎日、何の疑問もなくランドセルを背負って登校していた。その頃、オレもクラスメイトも「ランドセル以外のバッグを使う」という選択肢を持っていなかった。

別に校則で禁止されていたわけではない。事実、Kくんのボストンバッグの出現以降、ポツポツとランドセル以外のバッグを使う者が現れたからだ。

新しい風、だ。

新しい風が吹いたことで、そこに新しい価値観が生まれたんだ。
話を聞けば、Kくんがいた小学校では、高学年になるとランドセルを使わなくなる者が多かったという。そのことに憧れがあったことは想像できる。大人の階段を上るみたいに。

そのボストンバッグから出てきた筆箱に(今の小学生も筆箱と呼んでいるのだろうか)、なぜだろう、強く興味を引かれた。

それはボストンバッグと同様に、なんの変哲もない筆箱だった。知っているキャラクターがプリントされた筆箱だった。だけど見たことのない筆箱だった。
それは「異質なモノ」として目に映った。筆箱を開けたら、その中には見たことのない鉛筆が入ってるんじゃないか(どんな鉛筆だよ)そんな期待にワクワクした。

新しい風、だ。

今、ソロキャンプが流行っている。
キャンプ場に行くとソロキャンパーを見かけることが多くなった。完全にブームだ。
ソロキャンプのパイオニアといえば、タレントのヒロシだろうか。一般的に広まったきっかけとしての。ヒロシ以外にも、キャンプを「ウリ」にしているタレントは随分増えた。
それに伴い、テレビやネットでのキャンプ番組も増えてきて、それらを観るのはなかなか楽しい。

番組の中で、ソロキャンプをオススメすることも少なくない。そういうのを見ると、オレもソロキャンプをやってみたいな、と思う。そう思うキャンパーは多いはずだ。ソロキャンプをオススメする一番の理由として挙げられるのは、「誰にも気をつかわずに自由な時間を過ごせる」みたいなことだろうか。それはキャンプの新しい楽しみ方として、確かに魅力的だ。

ソロキャンプは時代的にも合っているかもしれない。たとえば新型コロナウィルスの影響だ。できるだけ「密」を避けた方がいい今、ソロキャンプはおあつらえ向きの趣味といえるだろう。だけど、そんな今だけど、あえて逆の提案をしたい。

いつものキャンプに「新しい仲間」を加えてみないかい?

実は先日、そんな機会があってとても楽しかったんだ。
「新しい仲間」の1人はコールマンの真っ赤なキャリーワゴンを携えてやってきた。
キャンプ赤ワゴン
コールマンの真っ赤なキャリーワゴンは、決して珍しいものではない。とはいえ、オレのキャンプ仲間にそれを使っている者はいない。だから、その「赤」はオレの目に新鮮に映ったんだ。

Kくんのボストンバッグだ。

新しい風、だ。

真っ赤なキャリーワゴンからキャンプギアを、食材を取り出すだけで新しい風が吹く。たとえばシングルガスバーナーがそうだ。
キャンプシングルバーナー
いつものオレのキャンプには登場しないものだ。
オレはいつも、家庭の鍋料理に使うようなカセットコンロを使っているから、それが登場するだけで本格キャンパーになった気分だ。新しい風だ。

と、思っていると、熱燗にするとか言って見たことのない土瓶的な薄っぺらいヤカンみたいなのがバーナーにセットされる。
キャンプ日本酒
いったいこれは、何用のなんなんだ。
そして、その周りに日本酒のビンが転がる。よくわからない状態だが、まぁ、新しい風だ。

そして何より驚いたのは食材だ。

手作りソーセージときたもんだ。軽くスモークしてから、炭火で炙る。
キャンプソーセージ
その「なんか知らんけどスパイスいっぱい入ってるな!」っていうクセの強い味は市販品にはない美味しさだ。皮がパリっとハジけないところが(笑)手作り感を強調して、逆に有難みが増すというものだ。(そのことで、シャウエッセンの「パリっ」の偉大さを改めて知る)

キャンプはマンネリしてくる。

キャンプって誰でも気軽に行けるものでもないから、キャンプ仲間はけっこう固定されていくものだ。その仲間と繰り返しキャンプしていると、どうしてもマンネリしてくるよね。
いつも同じ仲間と同じキャンプ場に行って同じものを食べて、みたいな。まぁ、それはそれで楽しいんだけど(笑)

でも、たまには新しいキャンプをしてみたい。
流行りのソロキャンプがいいかもしれないけど、でも、オレ的にはけっこうハードルが高い。自分一人のために、食材とか買い揃えるの、なんかめんどくせーな、って(笑)
そんなとき、オススメしたいのが「新しい仲間」を加える、だ。

そこには新しい風が吹く。

果たしてK君は6年生になる前に、また転向して風のようにどこかへ行ってしまった。



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コメント

 コメント一覧 (4)

    • 1. 三重人
    • 2020年11月17日 00:03
    • 5 住んでるとこが、高度200メートルの糞田舎なんですけど、走って45分で、高度400メートルのキャンプ場に行けます。
      キャンプ場まで走って行ったら、最近、寒いので、カップ味噌汁飲んでから下ってきます。

      滞在8分ですけど、これもソロキャンプと定義して、よろしいでしょうかね?
    • 2. シブケン シブケン(管理人)
    • 2020年11月17日 15:32
    • 三重人さん
      それは・・立派なソロキャンプですね。
      キャンプ場で味噌汁飲んでるんですから。その行為に対するソロキャンプ以外の呼び名が思いつきませんね。私の中では、ですが。
      たぶん、一般的には「休憩」と呼ばれているかもしれません。
    • 3. T
    • 2020年11月26日 19:28
    • シブケンさーん! 実は、赤いキャリーの持ち主がK君じゃないですよね?  久しぶりの再会みたいな笑
      来年の大会からは、リュックからボストンバックに変更します🏃‍♂️
    • 4. シブケン シブケン(管理人)
    • 2020年11月27日 12:55
    • Tさん
      いや、これがKくんだったらものすごい物語になるんですけどね(笑)
      残念ながら違いました・・
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