オレがまだフルマラソンを走ったことがなかったとき、こんな話を耳にした。
「42.195km先でお金では買えないモノを手にすることができる」なんて話を。
それを手にするために、オレはフルマラソンに挑戦した!なんていうロマンチックな物語は、ない。
ないけど、初めてフルマラソンを完走したときに、そういえば、とは思った。
お金では買えないモノを手にできるんじゃなかったっけ?って。
オレの手の中にそれはなかった。
もちろんゴールの喜びはあったけど、それは「お金ではかえないモノ」とは違う気がした。
次に完走したときも、その次も・・それを手にすることはできなかった。
そんなモノはどこにも見当たらなかった。だから「それ」が何なのかもわからなかった。
ポカリスエットだった。
初めてサブ4を達成した時だ。何回目の挑戦だったろう。とても苦しいレースだった。レース後半、何回もあきらめそうになった。その苦しさを乗り越えてサブ4を達成したゴール後に飲んだポカリスエット。
美味かった。
とてつもなく美味かった。口の端から漏れ流れるのも気にしないでゴクゴク飲んだ。最高の味だった。その味はコンビニで売っているポカリスエットとはまったく別の味だった。だから、いくらお金を払っても「その」ポカリスエットをコンビニで買うことはできない。
42.195km先でしか手にできないポカリスエットの味は、プライスレス!だ。
こう思う人がいるかもしれない。それはアクエリアスじゃダメなのか?と。
いや、別にアクエリアスでもいいよ。いいのかよ。
だからといって、スポーツドリンクだったらなんでもいいのか、と言ったら、まったくそんなことはない。
いつだったかの北海道マラソンのゴール後に、得体の知れないスポーツドリンクが配布されたことがあった。
「アミノなんちゃら」みたいなネーミングだったと思う。アミノバリューじゃないよ。たぶん発売されたばかりで「試供品」的な目的もあったのかもしれない。それは従来のそういったスポーツドリンクよりも、アミノ酸だかなんだかの栄養素的な何かが多く含まれているドリンクだったと思う。
くそマズかった。
まぁ、味はね、人それぞれ好みがあるから、その味を美味しく感じる人もいるのだろう。驚いたのはヌルかったことだ。常温だ。
暑い日だった。そんな日に42.195km汗だくで走った後に飲むスポーツドリンクがマズいって、ある意味すごいな、と思った。なんの罰ゲームだよ、そう思った。
その時思い出したのは、高校時代にもらった「差し入れ」だ。
オレは高校球児だった。そう、甲子園を目指す高校球児だ。
と、いえば聞こえはいいが、オレ自身は甲子園を目指したことはない。やる気がなかったわけではない。そんなに熱血でもなかったが。オレがサブ3を目指さない(目指せない)のと同じ理由で、だ。
現実味がない。
それに尽きる。それは遠い世界の話だ。
ただ、そこまで弱小野球部だったわけではない。と思う。
とにかく歴史の古い高校で「伝統」はあった。過去に全国大会に出場したこともある「伝統」だ。まだ高校が「中学」と呼ばれていた時代の話だ。
それは戦後間もない頃の話で、甲子園球場は米軍に接収されていて、西宮球場で全国大会は行われたという。
どんだけ昔の話なんだ。
あるとき、その全国大会に出場したというOBが練習を見に来たんだ。伝説のOBだ(誰だかまったく知らないけど)。齢70前後だったのだろうか。
大変申し訳ないが、当時ピチピチの(笑)高校生だったオレの目にはヨボヨボのジィさんにしか見えなかった。
ヨボヨボのジィさんが、両手に買い物袋をさげてグランドに現れたんだ。差し入れだろうか。その登場に心は踊った。
練習が中断するからだ(笑)差し入れもありそうだし。
当時は「ザ・昭和」的な野球部で、練習中は水をあまり飲めなかった。とにかく厳しい練習だった。日が暮れるまで練習していた。暗くなってボールが見えづらくなって、誰かがケガをして練習が終わりになった時があった。「ナイス!ケガ」そう思ったりもした(笑)
そんなマインドで強くなれないよな、と今は思うが、まぁ、昭和だったから。
そんな厳しい練習なので、途中で中断するだけでもうれしかった。だから、そこに現れたヨボヨボのジィさんOBはヒーローだった。そして、差し入れらしき袋はマネージャーに渡された。
ノドはカラカラだ。その袋にはスポーツドリンクが入ってるんだろ?早くよこせよと思った。
ただ、やっぱり、そこは簡単にはいかない。なんせ全国大会に出場したOBだ。なんやかやと講釈が始まる。叱咤激励のつもり(失礼)だろう。
時効ということで(勝手に決めるのもアレだけど)、その時のオレの気持ちを正直に書く。
「うるせーよ、ジジィ。早くその袋の中身をよこせ」
そう思っていた。
やっと話が終わって、監督が「差し入れをいただいたので」なんて言って、その時がきた。
早くしろ、こっちはノドがカラカラなんだよ。
ソフトクリームだった。
コンビニの冷凍庫で売ってるタイプのかたいソフトクリーム。
バカやろう、そう思った。ノドはカラカラ、砂っぽいグランドでソフトクリームをペロペロできるかよ!そう思ったけど、とけるから食べるしかない(笑)
まてまて、差し入れの袋はもう一つ残っている。いくらなんでも、そっちは飲み物だろ?そう期待した。あまかった。さすが全国大会にでた強者だ。オレと頭の構造が違うのだろう。
せんべいだった。
たのむ、ポカリスエットくれ。
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コメント
コメント一覧 (12)
それ以来、どんな内容であれフルを走った人とは何かを分かち合える気がします。
(一昨年初100km出ましたがデジャヴでした。)
さすが!
ここの記事を読むときは、飲み物禁止って、、
今日は吹き出すところまで行かなかったけど、
口元は緩みっぱなしだから!!
オモロい、オモロ過ぎるよー!
ところでですね、、
全然関係ない話なのですが、、
フォアフット、、
トレッドミルで昨日、一昨日、2日チャレンジしたんですよ。
したら、、
世界が変わりました (☝ ՞ਊ ՞)☝
何ですか?アレ、、
いや、疲れ方とか足の運びとか、
それまでの走りとは、全くの別物でした。
トレッドミルなのに、見える世界が変わってましたから (゜▽゜)
ただ、慣れていないもんで筋肉痛がワヤですけど、、w
長々とスンマセン m(__)m
わかります!苦しみながら同じゴールに向かうことで「同志」って思えますよね。
でも、ゴール前では一人でも抜いてやろうってダッシュするんですけど(笑)
うまく落とせた?(笑)
いや、ホントにフォアフット最高なんですよ!私もまったく脚を痛めることなくなりましたからね。
だから、みんなに強くアピールしたいんですけど、なんせレースで結果を出せてないので・・
来年はなんとかサブ3.5を達成して、「ほら!フォアフット最高でしょ!」ってやってやります!(笑)
自分は初めてのウルトラの時、70㎞くらいで絶望的な状況でふと現れた自販機で買って飲んだ甘い缶コーヒーの味が忘れられません。
人生最高の美味さで脳ミソがビリビリとシビれるほどでした。
そこから復活して何とか完走できました。
翌年、あの味を味わいたくて全く同じ所で同じ缶コーヒーを飲んだのですが、そこまで美味しくなかったなぁ。
よほど極限状態だったのですね。
話変わって、
先日今シーズンの本命フル走ってきましたよ!
3時間19分台と最低目標は達成しました!
でもサブスリー挑戦権はまだまだです…
来年はお互い50歳になりますね。
加齢の波は確実に押し寄せてますね…
大幅なタイム向上を目指せるのもあと数年かと思うので、悔いの残らないようお互い頑張りましょう!
楽しみながら…ね。
ウルトラのときは、いろんなプライスレスな味が身にしみますよね~
梅干し美味しかったな~
ところで3時間19分!トムさん・・ずいぶん遠いところへ行ってしまいましたね・・(笑)
そうですよね~、あと何年上を目指せるか。とりあえず来年サブ3.5はやってやります!ランニングフォームを改善してだいぶ調子よくなってきたので(まだ結果残せてませんが)ハーフとか10kmとかもベスト更新しておきたいところです。
とはいっても、コロナのやつがね・・どうなることやら・・でも今ある環境の中で楽しみましょう!
犬の散歩してた、ばぁさんに「あんた、大丈夫かい?苦しいのかい?」と聞かれて、心配されました。ばぁさんは「これでも食べて元気出しなよ」と袋が空いた、芋けんぴをくれました。
袋開いてんのかい!
オレも昔ゼーゼーしてたら、ばぁさんにペットボトルの水もらったな~
フタは開いてなかったよ。
ジムと二刀流で頑張ります。人生は、マラソンみたいなもんすね。
「人生はマラソン」そう思うことはよくあります。その逆も「マラソンは人生」。
二刀流がんばってください!