もしかして、こんな理由でこの本の購入を躊躇している人はいないだろうか。
「決戦前のランニングノート 大迫傑が考案したランニングノート付」

「大迫傑のような一流選手のランニングメソッドを知ったところで、自分みたいな末端市民ランナーがそれを取り入れることができるだろうか・・」みたいな。

心配ご無用だ。そういう本じゃない。

マラソンを速く走るためのメソッドの類は、たとえば、ランニングフォームがどうのこうのなんてことは一切書かれていない。大きな枠でみれば、高地トレーニングの重要性みたいなことは書かれているが、市民ランナーレベルの話ではない。
少なくともオレみたいな末端市民ランナーが参考にできるメソッドをこの本に見つけることは難しい。技術的にはね。精神的な面では学ぶことは多くあるよ。

じゃあ、どういう本なのか?

大迫傑のランニングノート、だ。表紙にそう書いてあるじゃないか。
大迫傑が日々の練習の後に様々な想いを書き込んだノートの一部を活字化・書籍化したものだ。
大迫日誌
ランニング日誌、と言った方がわかりやすいかもしれない。

そういうオレも、付録(付属)として「大迫傑考案のランニングノート」が付いている、というのを見て、ランニングメソッド本的なやつかな?と思わなくもなかった。日々の練習方法を指南してくれているんじゃないか、と。
それを付属の「大迫傑考案のランニングノート」を使って実践してみてください、ってことかな、と。

違った。

ただの日誌だった。
いや、「ただの」なんて書いたら語弊があるかもしれない。
だって、マラソンの日本記録を二度も書き換えた男の日誌だ。
そしてなにより、先日の東京五輪においては、魂の走りで人々に感動を与え、見事6位入賞を果たした男の日誌だ。仮に、ただの日誌だったとしても、貴重な情報に違いない。

だから、ただの日誌じゃないってば。

そうだよな、まさか「昨日飲み過ぎて、今日は二日酔いでした」みたいなことが書いてあるわけじゃないもんな。
そう思ったとしたらゴメンなさい。そういうことが書いてあるんだ。

もちろん、それだけじゃないよ(笑)そういうこと「も」書いてある。そこまで書いちゃうの!(本にしちゃうの!)みたいなところがあって面白い。

このラニングノート(日誌)を書く理由が、本の冒頭に書かれている。
「僕が日誌をつける理由」というプロローグで。オレはそれを読んで、関西人でもないのにこう突っ込んだよね。「なんでやねん!」って。

大迫傑が高校生だったころ、陸上部の決まりとして日誌を書き始めたという。恩師両角先生の指導で強制的に書かされていた、とのことだが。

大迫傑は日誌をつける理由はこう説明する。
日誌をつける意義として先生に言われていたのは、競技を続けていって、将来見返したときに新しい発見があるかもしれない、それが財産になるかもしれないということです。

さすが両角先生(詳しくは存じ上げないけど)いいこと言うな、そう思っていたら、次の文章で大迫傑はいとも容易くこんなことを言ってしまう。

僕は今まで一度も見返したことがありませんでしたが

なんでやねん!
みんなもランニングノートをつけて後から見返そう!って本じゃねーのかよ!この本で大迫傑が何を語るのか、俄然興味は高まる(笑)

そして、高校時代の日誌を一部掲載しつつ、東京五輪前2021年2月から6月までのランニングノートの内容を見せてくれるのが本書だ。あの東京五輪の走りに感動した人は興味深いだろ?どんな想いで走っていたんだろうって。

日誌の内容から、大迫傑のランニングメソッドの一部を垣間見ることは・・できる。
だけど、繰り返しになるが、それを末端市民ランナーが自分のランニングに取り入れることは難しい。

ケニアを走っているからだ。その他アメリカなど、拠点は海外だ。海外で高地トレーニングをしている。そして走った距離の単位がマイルだから、その距離すらピンとこない(笑)

この本は「大迫傑が何を考え何を想って走っているか」を知る本だ。ランニングメソッド本の類ではない。ランニングノート(日誌)以外にも、数ページにわたるコラム的なものも読むことができる。
それらのタイトルをいくつか挙げれば

「僕がケニアに来た理由」
「SNSとの付き合い方」
「失敗や負けたレースから学ぶこと」
「低酸素トレーニングについて」
「娘から学んだこと」
「僕にとっての東京オリンピック」

などだ。どう?読みたいでしょ?
中でも「SNSとの付き合い方」には驚いた。このコラム以外でも、だから日誌の中でもSNSについての言及は多い。これはけっこう意外だった。そんなこと気にしないで走りに集中していると思っていたからだ。

大迫傑はSNSをすごく気にしている。

自身の考えを発信するツールとして重要視しているからこそ、だが、しかし、エゴサーチ好き、とも書いている。

大迫傑はSNSに、とにかくイラついている。
その表現は少々過激で割と辛辣だ。たとえば日本人アスリートのSNS発信について、こう書いている。

発信だけしていて、中身が伴っていない選手がすごく多い

とか。
特に辛辣に表現されているのは、ファンやそのほか一般人がツイッターで語る大迫傑に対する勝手な意見についてだ。大迫傑はそれについて、大胆にもこう語る。

時に僕らアスリートは、ファンのマスターベーションに付き合わされる

そのマスターベーションの内容も、しっかりとこの本に引用記載され、それに反論している。日々のSNSの発信の中でも、議論・反論は積極的にしているようだ。

YouTubeも始めたとのことで、それに集まるコメントから、こんな思いも吐露している。

より多くのファン対して発信したことで、自分の周りにも割と沢山質の悪いファンがいるのだと思った。

辛辣だ。
オレは黙ってねーよ?

ってことだと思う。そして、これら「走り」を妨げると思われるものは「ノイズ」と表現する。SNSにおけるファンのマスターベーションもそうだし、がんばってる人の足を引っ張るようなテレビの報道などもそうだ。それらを総じて「ノイズ」と表現する。そのノイズを除去するために、ノイズキャンセリングのために、というのがケニアなど海外を合宿地として選ぶ理由のひとつにあるとのことだ。海外に行けば不要な情報はシャットダウンできる。少なくともテレビや雑誌なんかの。

そしてもちろん、このブログもマスターベーションでありノイズだろう。ゴメンなさい。

オレはこの本を、東京五輪開幕の直前に買った。この五輪が大迫傑のらラストレースになると知ったからだ。まぁ、発売されたばかりで話題になってた、ってのもあったんだけど。
大迫傑がどんな想いでラストレースを走るのか、この本を読めばあるいは知ることができるんじゃないかと思って買った。

しかし、残念ながらレース前に読むことはできなかった。他の五輪競技を見ることに忙しかったからだ(笑)
後悔している。レース前に読んでいれば、あの魂の走りにより感動できたのにな。特にゴール後のインタビュー。「今後のマラソン界」について熱く語っていた、その姿に納得し感動したと思う。

大迫傑は次世代のアスリートのことを本気で考えている。たとえは今後、地方巡業などをして子どもたちに意味のあるスキルを教えたいという。

東京五輪での大迫傑の魂の走りに感動した人は必読だ。大迫傑が何を想いラストレースを走ったのか、そしてこれからどうしていくのか。「今後の大迫傑」を知りたい方は是非。


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