さかのぼること数週間前、このブログのコメント欄に奇妙な依頼が投稿された。
「ランニングシューズを作ってみたから試してもらえないだろうか?」
ザックリ言うと、そんな依頼だった。
スポーツメーカーからの依頼ではない。個人からの依頼だ。その個人はこのブログをよく読んでくれているという。
まず思ったのは、ランニングシューズって個人で作るもんじゃねーだろ、だ。いくらDIYが流行っているとはいえ。
クッキー焼いたから食べます?のレベルじゃない。密造酒作ったんですけど飲みます?のレベルだ。
きたか、と思った。
大変に言いづらいことだが・・このブログをよく読んでくれているという人は・・
おかしな人が多いと思っている(笑)
いい意味でね(フォロー)
その変な人の中でも、トップオブトップに変な人がやってきた、そう思った(笑)
だって普通、どんなにランニングにのめり込んだとしても、ランニングシューズは作らないでしょ?
オレは幼い頃のあるシーンを思い出した。
父親が野球のバットを作ってくれたことがあって。物置にあった木材を削って作ってくれたんだ。グリップには赤い色のビニールテープがグルグルと巻かれていたのを憶えている。
ピッチャー父親、振りかぶって一球目を投げた!山なりのゆるいボールだ。バッターオレ、一球目から積極的に打ちにいく!
折れた。
一球打っただけで、ポッキリ折れた。一番細いグリップのところがポッキリと。
赤いビニールテープのみでブランとつながっているバットがもの悲しかった。しかし、それで学んだ。手作りの野球のバットはマズい、ということを。そんな生易しい強度じゃ、その役割を果たせないということを。
それ以上に手作りのランニングシューズはマズいんじゃないか?
一流スポーツメーカーが作り上げた製品でさえ、足にケガをすることはある。
ランニングのその一歩には、体重の3倍の負担がかかると言われている。おそろしいほどの荷重だ。その衝撃を手作りのランニングシューズで受け止めた時、オレの足はポッキリいかないだろうか?
あの赤いビニールテープが巻かれたバットのように。
しかし、その依頼文を読み進めると、内容は至ってマジメだ。真剣に研究開発に取り組んでいるようだ。そして、次の一文でオレは依頼を受けることを決めた。
「笑っちゃうくらいくだらないものだったとしても、それはそれでブログネタにでもしていただけたら幸いです。」
こんなおもしろいネタが過去にあっただろうか!とんでもないランニングシューズを見せてもらいたいと思った。
ちなみに、オリジナルのシューズといっても、それはミッドソールのみといことで。だから、アッパーとアウトソールは既存のものを代用しているということだ。とはいえ、興味は尽きない。
あえて、あらかじめ資料も写真も見せてもらうことはしなかった。その方がおもしろいじゃない。
本人曰く「素人が作ったものなのでケガのリスクを考えて、試し履きの可否を決めてください」との丁寧な対応で話は進む。いや、そこは心配ない。履いてみてヤバそうだったらやめればいいだけだ。
そんなことより、試し履き試走の1人目にオレを選んだことが心配だった。
大丈夫なのかオレで?その選択眼にやや不安はあった(笑)
いくつかオレに依頼する理由は述べてもらったんだけど。フォアフット着地していることが、理由の一つではあった。まぁ、オレが自分でフォアフット、フォアフット言ってるだけで、その完成度の程はわからないのだが。
結果、モロに!フォアフット着地に特化したミッドソールだったんだ。
早く写真見せろや!って?ちょっと待ってくれ。走ってる動画も貼るからさ。その前にもうちょっと説明させてくれ。
そのミッドソールの構成は、大まかにいえば「厚底+カーボン」ってことになるだろうか。
ナイキがそのパイオニアになるのかな。「厚底+カーボン」シューズの。
今は各メーカーから類似的(って言ったら怒られるかな)なモデルが発売されているので、履いているランナーも多いだろう。
オレは普段、スイス生まれのスポーツブランド「On」のランニングシューズを愛用している。今まで「On」には「厚底+カーボン」なシューズは発売されていなかった。だから、オレはそれを履いて走ったことがなくて。
しかし、ついに「On」からも今年2021年7月に「厚底+カーボン」的なシューズが発売されたんだ。
→On Cloudboom Echo(On公式サイト)
→On Cloudboom Echo(On公式サイト)
ウルトラマラソンの第一人者、Onアスリートの岩本さんもそのシューズのインプレッション記事を先日ブログにあげていた。
それを見て、オレも初「厚底+カーボン」はOnのシューズにしたい!と思っていたんだけど。
残念ながら・・オレの初「厚底+カーボン」は、どこぞの工作好きのおっさんが作った名もなきランニングシューズとなってしまった(笑)
あ、「工作好きのおっさん」は本人がそう言ってるんだよ。
「カーボンとかそういう素材を扱うプロなんですか?」って聞いたら「ただの工作好きのおっさんです」と。
だ、大丈夫か?
いいから、早く写真を見せろって?ちょっと待ってね。
いいから、早く写真を見せろって?ちょっと待ってね。
開発者の簡単なプロフィールを。
「俄発明家(自称)たいちょう」という名でやっているとのこと。
もちろん自身がランナーでもあって、サブ3ランナーだ。何より驚くのは、サロマ湖100kmウルトラマラソンを14回完走しているんだってよ!泣く子も黙るサロマンブルーだ。(10回完走でその称号が与えられる)ちなみに年齢は40代後半とのこと。それで14回はすごくね?
「サブ3」「サロマンブルー」と聞いただけで、オレからはランニングについて意見することは何もない(笑)
オレでよければ試走やらせてもらいます。ってことで走ってみたよ。
じゃあ、まずはそのシューズ(ミッドソール)の写真をば。
どう思う?
オレの第一印象は「なんだこれ!おもしろそー!」だ。
いかにも試作品といった見てくれかもしれないが、改良を重ねてここまできた、そうだ。
ちなみに、これが「9号機」になるという。っていっても、単純に9モデル目、というわけでもない。1-1号機、1-2号機と枝分かれしたモデルもあって、もっと多くのパターンを改良してきたそうだ。
まずは「はじめまして」ということで、いろいろ説明を聞いたあとで、いよいよ試走だ。
その履き心地は・・
モロに!フォアフット着地になる。
というか、フォアフット部で「しか」着地できない。かかとの緩衝材はオマケ程度のものだ。
2枚のカーボン板が組み合わさって、バネのようになっている。跳び箱のロイター板のような構造といえばいいのかな。歩くとボヨンボヨンする。はっきりいって歩きづらい。
が!走ると、程よいバネを感じながら軽快に次の一歩が前に出る。
おもしろい。イケるよ!これ。って、オレが言っても説得力イマイチだと思うが・・いい感じだ。フォアフット着地の良さが強調される、といえばいいか。
ただ・・長い距離を走った場合どうなるかはわからない。開発者のたいちょうさんは20km以上の距離は試しているとのことだが、オレはちょっとした距離をジョグしただけだ。
それだと、まったく何の問題もなかった。しかし、長い距離を走った場合どうだろう。
このシューズに合った着地ができなければ、もしかしたら、ふくらはぎに強い負担がかかる可能性はあると思った。誰でも快適に走れるものとは、また違う方向になるのかもしれない。オレは走りやすかったけどね。
さらに写真を見て、こう思った人もいるかもしれない。
このソール形状だと、レギュレーション違反にならない?って。
数か月前に、海外のどこかのマラソン大会の優勝者が失格になった例があったよね。厚底シューズが「厚すぎた」という理由で。
加えて、カーボン板2枚とかも違反にならない?って。
そんなこと、オレは知らない(笑)
仮にそうだとしても、そういうことも重々承知で研究開発していると思うよ。そして、「新しいもの」ってそういうところから始まると思うんだ。
この原理を応用して、レギュレーションに当てはめていく、みたいになるのかな。
少なくとも、赤いビニールテープで止めてる、とかはなかったよ。
もし、大会用に使えないシューズになったとしても、「フォアフット強制ギプス」とかにどうかな?なんてことも思ったよ。言わなかったけど。
いや、おもしろかったね。エリートランナーでもなければ、こんな経験なかなかできないでしょ。ランニングシューズの試作品を履いて走るなんて。
なんかいい方向に発展していけばいいな。応援したい。
最後に、その時の模様を動画で。
軽くBGM流れます。無音でオレのランニングを見るのは耐えられないので(笑)
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コメント
コメント一覧 (7)
先日は試し履きありがとうございました!
また、大好きなブログにこんなにもたくさん面白く書いてもらって、めっちゃ感激です!!
しかも、説明もしていないのに、レギュレーションに合わないことに対する考え方とか、誰にでも合うものではないこととか、を感じとってもらっていてびっくりしました!
現在、9号機より1cm小さい26.5cmの10号機製作中です。
もし、希望していただけるなら、今度はタイムを意識した試し履きはいかがでしょうか?
たとえば、感覚強度を同じにして、いつものシューズとこのシューズでタイム比較をする、とか。
あ、ひとつだけ訂正させていただくと、サブ3は10年以上前なので、現在はサブ3ランナーではありません、、、
先日は楽しかったです!家族と職場以外で誰かとお話したのは数年ぶりなような気がします(笑)
一杯やりたいですね~~~密造酒で!!
いや~こちらこそ面白い体験をありがとうございました!
そうですね、タイム比較すればその効果が見えてきますもんね。やりましょう!短めの距離で(笑)
ところで、サブ3・・ってことは・・また狙うんですよね?達成の暁には、私のサブ3.5達成と共に、密造酒で乾杯しましょう!(笑)
いや、ビックリするわ!やっぱりランニング好きはおかしな人が多いね。
オレたちもだけど(笑)
シブケンさんの走りも、変な力はどこにも入っていないように見えます。
ナイキのヴェイパーフライを履いたらとっくにサブ3.5でしょう。
何がしたいんですか?
いや~いろんな人がいて面白いですよね!
軽い感じで走れたのは、シューズのおかげかな(笑)