大雪山トレイルスタート
「スキー場を激登りしてもらいます。」

ゲキノボリ。

オレのボキャブラリーにはない言葉だった。そんな言葉で始まった大会、それが大雪山トレイルジャーニーだ。
60kmの部に出場した。2022年7月24日(日)のことだ。人生で激登りする日が訪れるとは思わなかった。

そして結果・・DNFだった。

残念ながら、自力でゴールゲートに帰ってくることはできなかった。時間オーバーで、35km地点の関門を突破することができなかったんだ。
今回のDNFの原因を説明するのは簡単だ。

力不足。

それ以外の何物でもない。この一言に尽きる。
しかし同時に、事細かに説明しようとすれば、無限に書き続けられるほど多くの出来事があった。もちろん、無限には書かないので安心してほしい(笑)とはいえ、けっこう長いかもしれない。

ここに書くことは「力不足で完走できなかった男」の話に過ぎない。
だから、トレイルランニングのレースを完走するためのヒントはない。ただ、無様な負けレースを回避するヒントはあるかもしれない。そう思って読んでほしい。

力不足。心技体すべてにおいて力不足を感じたが、一番は心、そう、精神面の弱さがDNFにつながったと思う。

スタート前、大会スタッフから説明があった。
「まずは平坦な15kmを走ってもらいます。」
「そしてそこから、スキー場を激登りしてもらいます。」
・・・

激登り。
嫌だな、と思った。もちろん何度もコース図をチェックしていたので、そういうコースであることはわかっていた。わかっていたけど、面と向かって「激登りしてもらいます」そう言われたとき、嫌だな、と思った。
スタート前に気持ちがマイナスに傾いてしまったんだ。

スタート。

まずは平坦なコースを15km走る。
といっても、平坦じゃない。長く登って長く下る。その繰り返しだ。もちろん「トレランのコース」にしては平坦なのだろう。しかし、オレの呼吸は途端に荒くなる。

なぜなら、想像より、かなり速いペースで集団が動きだしたからだ。

いや、自分で設定したペースで行けよ。そう思うかもしれない。
だけど、どのくらいのペースで行っていいかわからないんだ。登り下りを繰り返すトレランでは、ロードレースのように「キロ何分」なんて一定のペース設定はできない。
そんな中でも、各関門に時間制限がある。それをクリアしながら進まなければならない。

となれば、集団についていくしかない。

もちろん、トップ集団について行こうなんて思わない。そこまでバカじゃない。全体の真ん中くらいに位置付ければいいのかな、と思って走り出したのだが・・

みるみる・・集団において行かれる。ウソだろ?ってペースで集団が進んで行く。この先「激登り」するのにこのペース?っていう。
60kmの部にエントリーしていたのは140名前後だったと思うが、すぐにオレより後方には、パラパラっとしかランナーがいなくなったのではなかったか。
そうしようと思っていないのに、真ん中くらいにいようと思っているのに、そうなったんだ。ズリズリと引き離されていく。

なんだこの強い集団は。オレはヤバいところに足を踏み入れてしまったのでは・・

不安になり、そして自信がなくなっていく。
小学生の時、ピアノ教室にレッスンに行ったら、女子ばかりで男はオレ一人だった時のように。

いや、朝早いから体が動かないだけだ。レースは4時スタートだった。そのうちきっと動き出す。不安を払拭しようとする。しかし、すでに負のスパイラルに陥っているオレがいた。

今度は腹ピーピーだ。

朝早くから水分をガブガブ飲んだからか。前日の食事か。スタート前の軽い食事か。腹を冷やしてしまったのか。原因はわからない。しかし、過去にも経験があるランニング時の腹ピーピーだ。またやっちまったか。

「こんなんで完走できるのかオレ」

そう思ってしまった。この時点で、少しでも「DNF」が頭を過った時点でレースは終わっていたよね。でも、あきらめるわけにはいかない。トレラン初心者なりに、いろいろ準備してきたつもりだ。そして、遠い場所まで挑戦に来たんだ。なんとか完走したい。

まだ、あきらめない。「平坦な」15kmを終えた時点でトイレに行く。出すものを出したら、さっきまでの不調がウソのように調子が良くなった。

「あれ、イケるなこれ」

そこから数キロの間だけ、唯一の楽しい時間だったかもしれない(笑)
宣言された激登りを終えて、一つ目の山頂に立った時オレは一人だった。前後には誰もいない。そこはものすごい暴風だった。パラパラっと雨も降っている。寒かった。

そんな場所で頑張ってくれているスタッフの方が、きっと死にそうな顔をしていたであろうオレに、声をかけてくれた。
再び・・断続的にだけど腹ピーピーも襲ってきていたんだ。

「まだまだ余裕でしょ!」

元気付けるための軽口。ありがとうございました。
そこから一人の時間が長くなる。たまーに、追い越されたり、追い越したり。その繰り返し。基本一人で走る。そんな時間が続く。

今、激登りしてきた道は、帰りにまたもどってきて下って行く道になる。そんなコースだった。それを考えると・・60kmの最後にここを下って行くのか・・まだ20km過ぎだぞ・・半分も過ぎていない・・

無理だ。

ここで完全に気持ちは終わっていた。
それでも進むしかない。それがトレランだ。ここで止まっていても、誰も助けてくれない。進んで行くうちに・・もしかしたら体調が復活するかもしれない。そんな淡い希望を胸に進む。進むしかない。

今度はドロドロだ。

前日から降り続く雨で予想はしていた。ドロドロヌルヌルの下り坂。足首までタッポンって浸かってしまうような、回避できない泥の水溜まりもあったりして。それはもう、過酷なコースだ。

でも、そのドロドロコースに関しては、幸か不幸か・・2019年にこの大会の40kmの部に挑戦したときに経験していた。「また、これか!」くらいにしか思わなかった。それはほんの小さなトレランに対する成長だったかもしれない。こんなダメダメなレースでも、それも含めて、いくつかの成長はあったんだ。

直前にトレランの雑誌で得た、登りと下りのテクニック。すごく役立った。


下りを恐れないで攻めることができた。ポールを持ったのも大きかった。ああ、ドロドロじゃなかったら、もっと上手く下って行けるのにな。そのくらいの余裕を持てた瞬間もあった。その余裕が、またいつかトレランに挑戦したいと思う気持ちにつながればいいんだけど。

でも、すでにレースは終わっていた。完走するという気持ちは死んでいた。「どうやってリタイヤすればいいのかな」そんなことを考えていた。終わってる。

25km地点のエイド(ウォーターステーション)で35km地点の関門まであと1時間だと告げられる。残り10kmだけどずっと下りだから行けるよ!そう元気づけてくれた。そこにいた何人かのランナーは、それを目指して走りだした。かっこよかった。

オレは・・動き出したものの・・今のオレでは無理だろうな、そう思った。体が思うように動かなくなっていた。いや、正直に言おう。「間に合わなくてもいい」そう思った。いや、違う、はっきりとこう思ってしまったんだ。

「間に合わないでくれ」

そこで終わりたいと思った。
腐ってもランナーだ。出来る限りの力で進んだよ。でも「間に合わないでくれ」と思った気持ちでキロ6分ペースで進めるほどトレランは甘くない。それが下りだったとしても。

「ゲームオーバーです」

35km関門手前にいた陽気なスタッフがオレに告げた。マラソン人生(そんな大袈裟なもんじゃないけど)初めてのDNFだった。
心技体すべてにおいて力不足だった。一番は精神面の弱さがDNFにつながったと思う。精神面でもう少し強さを出せたら・・もっと行けたと思う。

なぜなら・・オレの体はピンピンしているからだ。多少の太ももの筋肉痛はあるけど。いつもなら、どんなレースでも、どこかしら体を脚を痛めてるオレだ。ギリギリまで追い込んだ証拠だ。

しかし今、オレはピンピンしている。それが残念だ。精神面の弱さから体を脚を追い込むことができなかったんだ。だからと言って、また来年挑戦します!とは気軽に言えない。それほど力不足だった。

前のブログで、「無謀と挑戦は違う」と書いたけど、ゴメンなさい、無謀でした(笑)


あと、もう一つ謝らなければならないことがある。あ、二つか。
一つはトレランに対する無知を謝りたい。

この苦しいレースの中でも、いくつかの救いはあったんだ。
オレにはトレラン仲間がいない。そもそも、普段トレランをすることがないんだから、そりゃそーだろって話なんだけど(笑)
だから、トレランレースは孤独な戦いになってしまう。

ところが今回、ツイッターで繋がっている人に、大雪山トレイルのスイーパーをするってリプをもらって。

まずここでオレの無知を謝りたい。
その時点でオレは「スイーパー」ってものを知らなかったんだ。みんなスイーパーって知ってる?ランナーとして知ってなきゃダメだぞ(うるせーわ)

調べたところ、基本的には制限時間に合わせて、最後尾を走ってきてランナーをサポートするスタッフのことをスイーパーっていうんだね。その他のサポートもしてくれるありがたい存在だ。

ゴメンなさい、その呼び名、知りませんでした。ロードレースでは耳にすることがなかったもので。
考えてみれば、その存在なくしてトレイルランのレースは成り立たないよね。だって、どこでも自由にリタイアできるわけじゃないから。そんなとき助けてくれる存在だ。あ、もちろん、ロードレースでも大切な存在なのはわかります。

それで今回、オレはそのスイーパーさんと何度もレース中に会うことになったんだ。制限時間ギリなレースをしていたからね(笑)
苦しい時にいろいろ話せて救われました。ありがとうございます。

そしてもう一つ謝りたいのが、このブログを読んでます!って声をかけてくれたランナーに対してだ。
ホント、トレランレースのときは、いつも声かけてもらえるんだよね。1対1ですれ違うことが多いからだと思う。今回も何人かのランナーが声をかけてくれて。

互いに「がんばりましょう!」って声をかけ合ったんだけど・・・

ゴメンなさい、そのほとんどの瞬間でオレの気持ちはすでに「DNF」でした。そんなオレに声をかけてくれて・・無駄な力を使わせてしまってゴメンなさい。きっとオレ、死にそうな顔してたでしょ?(笑)
でも、苦しい中、その瞬間だけでも気持ちが楽になりました、ありがとうございます。

大雪山トレイルジャーニー、今回で一区切りつけるとかなんとかも聞こえてきたけど、どうなんでしょう。来年もあるのかな。
いずれにしろ、ここでまた挑戦します!とは宣言できない。それほど力不足を感じたから。

だけど、せっかく下りのテクニックも身についてきたし、またどこかのトレイルは挑戦したいかな。距離は・・自分の実力を見極めながら決めていこう。

やっぱりね、レースに出たからにはゴールしないとダメだね。
ゴールに返ってきたランナーの晴々しい笑顔を見たら、オレももっとがんばればよかったって思うよね。

レースが終わったのに(DNFだったとしても)体がピンピンしてるのダメだわ(笑)


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コメント

 コメント一覧 (12)

    • 1. pen
    • 2022年07月26日 19:47
    • お疲れさまでした!
      きつそうですねぇトレランの60km。 普通の人はスタートラインにすら立たないレースです^^;
    • 2. トム
    • 2022年07月26日 20:48
    • シブケンさん、本当にお疲れ様でした!
      DNF…無念かと思いますが、自分からリタイアせずに関門オーバーまで諦めなかったこと、精神面でも弱くなんかないですよ!
      やっぱりトレランの60㎞って凄いんですね。ウルトラの60㎞地点でも相当ですもんねー。

      さあ次は僕の番です!
      実に4年越しの山頂コース初挑戦。
      シブケンさんの分まで精一杯頑張ります!応援よろしくお願いします!!
    • 3. シブケン シブケン(管理人)
    • 2022年07月27日 09:03
    • penさん
      不甲斐ない結果でしたが・・スタートした自分を褒めておきますかね(笑)
    • 4. シブケン シブケン(管理人)
    • 2022年07月27日 09:10
    • トムさん
      大切なのは気持ちだよ!最後まであきらめないこと!
      ここまでの「おまえが言うな」もなかなかないと思うけど(笑)
      1971年組代表として、あとはまかせた!応援してます!!
    • 5. ひろ
    • 2022年07月28日 08:40
    • 5 お疲れ様でした‼️
      完走率がエグいくらい低かったみたいですね💦9月、10月もいくつかトレランあるのでリベンジどうですか❓

      スタート地点に立った時点で勝者ですよー
      自分なんてロングはまだエントリーする気にならないですから。
    • 6. シブケン シブケン(管理人)
    • 2022年07月28日 09:18
    • ひろさん
      リベンジか・・すぐにはその気にはならないですけど(笑)でも、もう若くないので今のうちに挑戦しなきゃな、とも思います。どうすっかな~
      ひろさんもやりましょう!
    • 7. Pachiras
    • 2022年07月28日 22:47
    • 過酷すぎる。。冷汗)
      こういう楽しそうなのがいいんですけど↓

      https://www.youtube.com/watch?v=MEY_6F7HtgM
    • 8. シブケン シブケン(管理人)
    • 2022年07月29日 12:36
    • Pachirasさん
      確かにこれは・・めちゃくちゃ楽しそう!
      まぁ、部門によってとか、各々にとってどういうレースなのか、でも変わってくるんでしょうけど。それにしても楽しそう。
      それに比べて・・この前のオレの動画があったとしたら「こいつ山で死に場所探してんのかな?」って見えるかもしれません(笑)
    • 9. トム
    • 2022年07月29日 12:51
    • シブケンさん
      富士登山競走、走ってきました!
      結果は…
      五合目関門オーバーでした…

      五合目関門オーバーは予想してなかったのでかなりのショックでしたが、自分も完全な実力不足でした。
      茫然自失で、今はリベンジも考えられないです。
      応援ありがとうございました!
    • 10. シブケン シブケン(管理人)
    • 2022年07月29日 13:47
    • トムさん
      まずはお疲れ様でした!!
      いや~まいったね、お互いに・・どうする?(笑)
      すぐにリベンジしてやる!とはならないよね。わかります。
      オレは少しだけ・・9月か10月にもう一回だけ長めのトレイル挑戦してみようかなって気持ちが湧いてきたかな・・少しだけ。
      なんか来年の方がやる気出ないかな、と思って(笑)
      まずはゆっくり休んでください!まぁ、ほどほどにがんばっていきましょう!
    • 11. F
    • 2022年07月30日 12:53
    • お疲れ様でした!
      25k〜35kの林道ですれ違い、声をかけさせてもらいました!
      確かにしぶけんさんの顔は青白くて死にそうでした笑

      私も40kの部で、天候不良による12時の足切りで、悔しくもレース中止となってしまいました。

      この悔しさを晴らすため、9月のニセコトレランにエントリーしました!
      まだ間に合いますよ!しぶけんさんもどうですか?笑
    • 12. シブケン シブケン(管理人)
    • 2022年08月01日 16:42
    • Fさん
      天候不良でコース変更などなど、いろいろ大変でしたね!
      まぁ、どうなろうと私にはあまり関係ありませんでしたが。リタイアポイントでそれを知りましたから(笑)
      9月のニセコがんばってください!応援してます。
      私は・・あ、誰かきたので、また今度考えます(笑)
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