マラソンレースのスタートは難しい。いつも失敗しているように思う。
規模の大きい大会になると、スタート直後の混雑からしばらく抜け出すことができない。思い通りのペースで走れない、ということだ。それで焦る。ジグザグに走って追い越しをかけてしまうこともある。一気にスペースのあるところに移動しようとして、加速してみたり。逆に減速したり。
そんなムダな動きは、想像以上に体力の消耗につながっていると思う。そしてうまく波に乗ることができない。あれ、まだ1キロなのにもう疲れてるな、なんてことになる。ムダに動いているからだ。そうなればもう、失敗レースになってしまう可能性は高くなる。
なぜそんな余裕のないスタートになってしまうのか。ムダな動きは抑えるべきだ、と、わかっているつもりなのに、そうなってしまうんだ。自信がないからだ。後からいくらでも取り返せる、という自信も余裕もない。
自信をもってスタートラインに立つ。
これはとても難しいことだ。
大会数か月前から目標達成のためにトレーニングを積む。だからといって、無理なトレーニングでケガなんてしようものなら、本末転倒だ。体重の管理も大切だ。風邪をひくなんてもってのほかだ。コロナ禍でいえば、自分の体調管理はもちろん、濃厚接触者なる状況も回避しなくてはならない。
スタート当日、前日はもちろん、数日前から食事も気を付けなければならない。腹を壊したら大変だ。生ものは食べない方がいいとかなんとか。
ホテルに前泊するような、遠い土地で開催される大会に出場するときはもう大変だ。家からホテルまでの移動手段。大会当日の朝食はどうする?ホテルから会場までの移動手段は?荷物は全部手荷物として預けられるか?それとも駅のコインロッカーなんかに預けたほうがいいのか?問題山積だ。
寒い日に、スタート30分前からスタート地点に集合するのも辛い。まず単純に寒い。スタート直前まで100円カッパを着てたとして、捨てるところはあるのか?あれ、さっきトイレにいったばかりなのにまたか。尿意だ。寒さは尿意だ。
どうしよう、もう一回トイレに行くか。でも、すごい並んでるしな。スタートに間に合わなかったらどうしよう。やっぱりスタートしてすぐのトイレに駆け込むか。
走りのことはそっちのけだ。
走りのことはそっちのけだ。
そんな状況で、どうやってレースを組み立てるというんだ。失敗レース確定だ。
それら全てをクリアして、自信を持ってスタートラインに立つ。とても難しいことだ。しかし、だからこそ全てをクリアして、練習から移動から荷物から尿意まで、全てをクリアして自信を持ってスタートラインに立てたなら・・
きっとスタートから波に乗って、目標を達成できる確率も高くなるだろう。
「スタートを制する者はレースを制する」
あると思います。
スタートの難しさを考えたとき、オレはある一場面を思い出さずにはいられない。昔見たテレビ番組の一場面だ。なにかのバラエティー番組だ。障害物レース的な競技をやっていた。レースというか、一人でコースを進んで時間内にクリアできたら100万円、みたいなやつだ。一本橋みたいなところを渡ったり。左右からくる振り子を交わしながら進んだり。ただ進むだけじゃないぞ。
スプーンを持って、その上にピンポン玉をのっけて進むんだ。
玉を落とさないでゴールしたら100万円。平和な時代だ。そんな時代が確かにあった。それはいい。その日、それまで何人かのタレントが挑戦していたが、誰も100万円を獲得していなかった。
そして、満を持して登場したのが、元バレーボール選手の女性だ。確か日本代表にも選ばれたことのある有名な人だったと思う。
それまでのタレントとは体が違う。体幹もしっかりしているだろう。もちろん長身だ。長身であることが有利なコースだったように思う。スタジオのみんなは期待した。彼女ならイケる、と。オレもテレビを見ながら、いいとこイケるんじゃね?そう思った。元アスリートが、こんなつまらない、といったら失礼かもしれないが、でも、やっぱりつまらない競技に挑戦するんだ。スプーンを持って、その上にピンポン玉をのっけて進む。
見ていられない気もしたが、でもやるからには、ぜひ100万円を獲得してほしいと思った。100万円を獲ったら、友人と焼肉に行く、そんなことを言っていたかもしれない。否が応でも期待は高まる。
彼女がスタートラインに立った。右手にスプーン。そしてその上にピンポン玉。
ピッピッピッピーン!スタートの合図が鳴り響く。彼女が一歩踏み出そうとした、その時だ。
スタートの合図と同時に、スタートラインに設置された踏切のようなバーがグィーンと下から上に開いたのだが・・
そのバーが彼女のスプーンを持つ手を直撃した。彼女の手がバーによって下から上に引き上げられる。あわわわ、みたいな感じでスプーンを持つ手が上がっていく。当然、ピンポン玉は落ちてしまった。失格!
なにか、見てはいけないものを見てしまった気がした。
どんな時でも、スタートは難しい。
関連記事
関連記事
Follow @shibu_ken
スポンサーリンク
コメント
コメント一覧 (4)
スタートラインに立った時点で勝負は決まっているのかもしれませんね~
なので自己肯定感向上訓練取り入れてます。日本の本当の歴史を学べば間違いなく向上しやす。
いつもトイレのこと考えてるわけじゃないですよ!
ま、でも、不安に思うことの方が多いですよね。ゴール遠いなぁとか(笑)
ワクワクしながら、スタートの号砲を待ってみたいものです!