永野がおもしろい。永野の本をオススメしたい。
芸人の永野だ。「ラッセンが好き~」の永野だ。
このコンプライアンスだなんだにうるさい時代に、言いたいことをはっきり言う、嫌われて上等な姿勢に笑ってしまう。

その永野が書いた本がおもしろい、と耳にしたので2冊読んでみた。なにやら「ロック」ついて熱く語っている本だと。オレもロックが大好きなので、永野がロックを語っているなら読むしかないな、と。

「僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!〜」
僕はロックなんか聴いてきた


「オルタナティブ」
オルタナティブ


「僕はロックなんか~」は音楽に関するエッセイ、「オルタナティブ」は音楽と映画に関するエッセイだ。音楽に関しては2冊とも主に「ロック」の話だ。ヒップホップについても少々。

タイトルにもある通り「ニルヴァーナ」のカート・コバーンの話を軸に「U2」「レッチリ」、その他割と有名どころ(だよね?)の洋楽ロックの話が多い。永野は1974年生まれだ。同世代で音楽好きの人ならば共感できる話題も多いと思う。

いや、もしかしたら共感できないかもしれない。

なぜなら永野は言いたい放題だからだ。言いたいことをはっきりと言う。好き嫌いをはっきりと言う。それが大好きなバンドであったとしても、あのアルバムは最高だけど、あのアルバムにはがっかりした、とか。

だから、もしかしたらアナタの好きなアルバムにケチをつけられているかもしれない。
だとすれば共感はできないだろう。だけど、永野の言い分に納得はすると思う。っつうか笑うと思う。

永野のロックの聴き込み方が尋常じゃないからだ。

たぶん、アナタの好きなアルバムをアナタ以上に真剣に聴き込んで、その上で「がっかり」している。
この本は、単にロックの「曲」だけを語っている本ではない。その曲が出来た背景を、そのバンドが背負ってきたもの全てを含めて好きか嫌いかを語っている。あるロックスターをつかまえて、こんなことを言う。

ドラッグの影響なんかで老いぼれて落ちぶれてその転落ぶりに感動しました。
(「オルタナティブ」より抜粋)

さらに永野の人生が乗っかっている。
永野が歩んできた人生で、人生のどんな場面でその曲を聴いてきたのかを語っている。その人生は一般的に見て「上手くいっていない」人生だ。自分でそう書いている。そして、そんな上手くいっていない人生で、永野はロックに救われてきた。

その上で、好きか嫌いかをはっきりと言う。

今の時代それは簡単なことじゃない。好きか嫌いかをはっきりと言うことは。一歩間違えれば、誹謗中傷と捉えられるかもしれない。一般人のブログやSNSでも炎上する時代だ。それをテレビでも見るような有名(じゃなかったらごめんなさい)芸人が書籍として発表するのは躊躇するところもあるんじゃないか。

永野は躊躇しない。

言いたいことを言っている。好きか嫌いかはっきりと言っている。笑うしかない。時にそれはオレの思うところを代弁してくれる。たとえば「僕はロックなんか聴いてきた」の章のタイトルだけでも笑う。

ベックとビョークは「褒めなきゃいけない人」だった、とか(笑)

一番納得して笑ったのは「テキサス三味線」の話だ。
日本人に本物のヒップホップはできるのか?「日本語ラップ」って無理してないか?というよくある議論についてだ。その昔、ロックを日本語で歌うことはできない、みたいな議論もあったよね。

よく考えたら「日本語ラップ」って無理してるというか、「テキサス三味線」みたいなことだと思うんです。テキサスでテキサス流の三味線プレイが生まれたとして、それが見事だったとしても、三味線って意外と三味線のままで良くね?という。すごいけど、わかるけど、普通に「津軽三味線」で良くね?という。
(「僕はロックなんか聴いてきた」より抜粋)

と言いつつ、そう思っていたけど、この日本で本気で本場のヒップホップをやっている日本人もいるというエピソードも添えられる。練マザファッカーのD.Oについてだ。

陳腐な表現にはなってしまうが、永野の批判には「愛」がある。ロックやヒップホップに対する愛だ。それは自分を救ってくれた音楽だからだ。

愛がある批判だから笑ってしまう。

あれも笑ったな。
ロックとかアートって、なんか不幸の上に成り立つって思われがちじゃない?がんばっても貧乏から抜け出せない、そんな理不尽な社会に対する反骨精神がこの曲を生み出しました、みたいな。永野はこう言う。

でも究極、バイトしながら四畳半で曲書いてる奴より桑田佳祐のほうが良い歌作るんです、残念ながら。
(「オルタナティブ」より抜粋)

今の時代、どんなものも認めよう、という空気がある。アナタの嫌いな音楽もどこかに好きな人はいるんだから批判するのはやめよう、って。それはそれで正解だろう。時代は変わる。

だけどその昔、「オレの好きな音楽とオマエの好きな音楽どっちがかっこいいか」を言い合うのもまた、一つの音楽の楽しみ方だった。もちろん「批判」も込みで。

例えば、オレは長い間アマチュアバンド活動をしているんだけど、そのアマチュアバンド同士でさえそれがあった。
「お前の曲ダセーな」とか「もろパクリでしょ」なんて言い合いはフツーにあった。時には陰口として。なぜだろう、ライブで出会うバンドは全員「敵」みたいな(笑)それをロックだと思い込んでいたのかもしれない。

今はそういう空気はないね。みんな礼儀正しく、和気あいあいとしている。陰口はあるかもしれない(笑)
若い人たちは酒もあまり飲まない。スマートだ。とにかく隙あらば酒を飲んでいるのはオッサンばかりだ。それについては間違いなく陰口をたたかれてると思う。酔っ払いの汚ねぇーオッサンどもだな、って。オレです。

陰口は置いといて、それもまた平和でいい時代なのかもしれない。だれだって批判されるのは嫌だからね。だけど、永野の言いたい放題を聞くと笑ってしまうオレは、やっぱり古い時代に生きた人間なのだろう。

いやー、永野おもしろいね。

そういえば、永野のプロフィール見て驚いた。誕生日が一緒な有名人が増えたよ。今までは早見優と細川ふみえだったんだけど。


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コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. sakana2053
    • 2023年08月05日 09:44
    • 5 言いたいことも言えないこんな世の中は〜POISON

      敬具 反町隆史
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