この週末、キャンプに行ってきた。
キャンプのいいところは、世の中から「隔離」されることだ。たとえば情報が遮断される。
この情報社会で生きていく中で、情報を遮断するのは難しい。
スマホを触らない日はない。好き嫌いにかかわらず、スマホはなくてはならないものだ。便利に生きていくなら、ということだけど。スマホは情報だ。スマホを触れば、何かしらの情報が勝手に入ってくる。
オレは頻繁にスマホを触る方ではないと思うが・・それでも次から次へと情報が勝手に入ってくる。この前、新しいお天気アプリを入れたら、「雨雲が近づいてます」とか勝手に教えてくるようになった。特にそういう設定はしてないんだけど。なんか未来だ。いろんなことが精度高く予測される。近い未来に「明日事故で死にます」とか言われるんじゃないか。少し怖い。
スマホを触らなくたって、情報は勝手に入ってくる。たとえば隣に座るカップルの会話から。今年の冬は暖かいみたいだよ、とか。アマゾンでセール始まるよ、とか。定食屋のテレビもニュースを伝えてくる。どこそこでの戦争について、とか。
情報を遮断するのは難しい。
知っておかなければならない情報もあるだろうが・・知らなくてもいい、知りたくない情報も多い。っていうか、ほとんどはオレに必要のない情報ばかりだ。八冠を制覇した将棋の最後の一手について、とか。たまにはそんな情報を遮断して静かに過ごしたい。
キャンプに行くと、ほんのひと時だけど、それが叶う。
山奥のキャンプ場に行けば、スマホの電波はない・・なんてことは今の時代ほとんどないけど、少なくともWi-Fiは整備されていない・・と言いたいところだけど、以外に整備されていたりする。
キャンプ場にWi-Fi飛ばすなよ。
今の時代、キャンプ場でリモートワーク、なんてこともあるみたいだから需要と供給でいえばアリなのか。ま、マジで?キャンプ場でリモートワーク?まぁ、それはいい。
いずれにしても、オレはキャンプ場でスマホを触ることは少ない。何枚か記録的に写真を撮るくらいだ。あとは報告程度にSNSをアップして、と。基本的に野外活動をして汚れた手でスマホを触るのが嫌だし。
そんなことより、焚き火の薪をくべることに忙しい。ダッチオーブンで煮込んでるビーフシチューが焦げ付かないかチェックもしなきゃ。

柄にもなく、夜空を見上げて思わず「星がきれいだな」とか言ってしまったり。それほどキャンプ場で見る星は夜空に輝いている。
朝がくれば、昨日残したビーフシチューを温めなおす。聞いたことのない鳥の鳴き声が聞こえる。今、気になるのは世界情勢ではなく鳥の種類だ。木々の中に鳥の姿を探す。スマホは必要ない。だから不要な情報は入ってこない。
たった一日二日のことだけど、世の中でなにが起きているのかわからなくなっている。ちょっとした浦島太郎だ。その状態が心地いい。それがキャンプのいいところだ。オレ的には、という話だけど。
キャンプからの帰り道、温泉に寄ることにした。有名な温泉地にあるキャンプ場だ、寄らない手はない。温泉から上がって休憩所で汗がひくのを待つ。その間スマホを触る。途端に情報が入り出す。情報社会へ復帰だ。
そうだ、今朝MGCがあったんだ。MGC・・マラソングランドチャンピオンシップ。
2024年パリ五輪の男女2名ずつのマラソン代表が決まるレースだ。気付けばもう結果が出ている時間だ。動画はまだアップされていない、か。スタートからゴールまで、距離ごとに更新されていった速報を文字で追う。
川内が、川内が、川内が・・
川内の文字が躍る。川内?そう、あの元公務員ランナー川内優輝その人だ。そこには雨の中、トップをひた走る川内優輝がいた。文字だから詳しい状況はわからない。だけど、確かにトップをひた走る川内優輝がいた。35km過ぎまでトップだったという。
何が起きていたんだ?
オレはワクワクした。少しニュアンスは違うかもしれないが、その時のオレの気持ちを表すとすれば、やっぱりワクワク、が近い。もう、結果が出ているはずなのにワクワクした。
おいおい、どんなレース展開だったのよ!って。
川内選手もトップランナーに違いないが、しかしMGCだ。やれ日本記録保持者だ、やれ大迫傑だ、川内選手よりも速い記録を持つランナーが何人も出場している。そんな中、このレース展開を予想できた者が何人いただろう。
結果、男子の優勝は小山直城、2位が赤﨑暁、3位が大迫傑、そして川内優輝は4位だった。川内4位!すげー!と思った。女子の優勝は鈴木優花、2位が一山麻緒だった。
オレが詳しくないだけだと思うが、男子も女子も優勝した選手を存じ上げなかった。
誰だよ!(楽しい意味で)と思った。マラソンおもしれーと思った。雨、の影響もあったのだろう。それにしても、それも含めて思い通りにならないのがフルマラソンなんだな、って。
そして「やめてくれよ」そう思った。
マラソンおもしれーと思わせないでくれよ、と。
レベルは天と地、月とスッポンだけど、こんなトップランナーたちが思い通りにいかないフルマラソン、オレが思い通りに走れるわけもないな、って。今シーズンのオレの不調も気にすることねーな(気にしろよ)って。
だったら、また来シーズン、もう少しがんばってみるか、マラソンおもしれーし、って思っちゃうじゃない。
オレの今年のマラソンシーズンは終わったんだ。2023年10月1日のレースで。
北海道のマラソンシーズンは雪解けの3月下旬から雪積もる12月上旬までって感じだ。で、オレの場合、今シーズンのレースにはもうエントリーしていないから、シーズンは終わったってことだ。オレは基本レースに「走らされてる」ランナーだ。だから今はランニングの頻度はグッと落ちてる状態で。太らないように、のらりくらりは走るけど。
そうなると、もう真剣には走りたくないな、って思っちゃって。「オレ、ホントにマラソンやってる人なの?」って思っちゃう。いつか辞めるんだから、今年で辞めてもいいんじゃない?マラソン、って。やっぱりマラソンって苦しいこと多いからね。
そんな今日この頃だから、キャンプやってるときも、頭には、マラソンの「マ」の字もなくて。マラソンシーズン中だと、キャンプやってても、「明日の朝キャンプ場周りちょこっと走るかな」なんてこともあるんだけど、今はなくて。まったく。そんなこともオレにとっては、世の中からの「隔離」になる。
なのに見ちゃったもん。風呂上がりにスマホでMGCの結果見ちゃったもん。川内の大逃げレース知っちゃったもん。マラソンおもしれーと思っちゃったよ。
って言ってもね。トップランナーの話だ。五輪代表になれるかなれないかだ。そりゃがんばるよ、って。やっぱり別次元の話だ。あくまでマラソンファンとしてワクワクしただけだ。それはそれだ。
さぁ、家に帰るか。車を走らせる。
広大な自然の中を貫く一本道を車でひた走る。右手は牧草地だろうか、左手はなんかの畑だ。そして奥には山。北海道デッカイどう、だ。果てしなく土地が道が続く。こんだけ土地あるんだから、わざわざ火星に移住しなくてもいいだろ、と思ったり。
行く先にランナーがいた。リュックを背負って走っている。
うわー、どこから来てどこに向かってるんだろう。なんかに向けたトレーニングかな。しっかし道は果てしねーぞ、がんばってくださいね、と思って通り過ぎる。
しばらく行くと、またランナーが走ってる。ん?よく見たらゼッケンを付けている。え!こんな果てしない田舎道を走るマラソン大会なんてあったか?オレは知らない。その後も、ポツポツとランナーが走っている。なにこれ。なんなの!

※一部ぼかしで失礼します
そのほとんどのランナーの足取りは重い。
とはいえ、初心者ランナーではけっしてない。すごく走れるランナーが長距離を走ってきたからそうなっていることがわかる。
いけどもいけどもコース上に給水エイド的なテーブルはない。果てしない道が続くだけだ。どうやら自分で水分を用意しなければないようだ。気温も20℃を超えていて、長い距離を走るには少々キツいかもしれない。天気が良すぎる。サイコーのキャンプ日和ではあったんだけど。
こんな時はスマホだ。スマホは情報だ。スマホで大会を調べてみる。あった。たぶんこれだ。50kmの部と100kmの部がある。こんな果てしない田舎道を?いや、すごいな。リスペクトせずにはいられない。がんばれ!と心から思う。
こういうのを見ると、自分もまた挑戦したくなるじゃない。まいったね。マラソンは・・簡単にはオレを逃がしてはくれないようだ。
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コメント
コメント一覧 (2)
きっとまた走りますね、シブケンさん。
「こんなトップランナーたちが思い通りにいかないフルマラソン、オレが思い通りに走れるわけもないな、って。」の所。私もうんうんうなづいて、首が取れそうになりました。
少なくとも・・来シーズンはがんばって走ってみます。ちょっとだけよ(加藤茶)