人は驚くと大根役者になる。そんなことが言えないだろうか。

「らい・・しゅう?」
大根役者のセリフのように芝居がかった問い掛けをしてしまったのは、本当に驚いたからだ。

よく行く焼鳥屋さんでラン仲間と偶然会って。お互いによく行く店なので、そこまで偶然でもないけど。来週フルマラソンを走ると聞いて驚いたんだ。
いや、別にフルマラソンを走るくらい驚くことじゃないんだけど(何度もフルを走ってるランナーだから)時期的なことで驚いたんだ。

いやいや、時期的にもこれからマラソンシーズン本番、って人は多いだろうから何を驚く必要があるんだ?ってことになるかもしれないが、北海道的には、ってことで。
北海道のマラソンシーズンは雪解けの3月下旬から雪降る12月上旬までって感じなんだ。雪の上を走らないとすれば、だけど。(雪上ランするランナー、年々増えてます)だから、そろそろシーズンも終わりに近いし。こんな時期にフルマラソン!って。

いやいやいや、北海道だってもうしばらく雪は降らないだろうから、まだまだマラソンシーズンではあるんだ。っていうより、北海道も今年2023年の夏はバカみたいに暑かったから、やっと走りやすい気候になってきた感じでもあるし。フルマラソン走るなら、今だ!って感じがしないでもない。北海道を出て、本州方面のレースを走るランナーも多いしね。

だから結局はオレの話だ。オレの中でマラソンシーズンが終わっているだけだ。今のところ、次のレースへのエントリーはしていないので。

まぁ、タラタラは走っているよ。だけど、頭の中に「大会」はない。だから驚いたんだ。この時期にフルマラソン走るのか、すごいなって。しかも石川県は金沢まで足を伸ばすという。それを聞いたときも「かな・・ざわ?」って、芝居がかった問い掛けをしたよね。驚いたから。そう、先週開催された金沢マラソンだ。どうやら無事に完走したみたい。

そういえばそこの焼鳥屋さん、すごく美味しいのに、値段が安いからいつも驚くんだ。
「に・・せんえん?」
もちろん芝居がかった問い掛けで。

ある時、車で走りながら奥さんと何を食べるかで迷っていたんだ。お互い食べたいものが特にない。強いて言えば「うどん」が食べたいかな、と奥さんが言った。よし、うどんにしよう。

だけど、近くにうどん屋さんがなかった。別に遠くまで行ってうどんを食べたいわけでもない。と思っていたら、蕎麦屋さんがあった。まぁまぁ有名な蕎麦屋さんだ。蕎麦専門店だ。ザ・蕎麦屋さんといっていいだろう。奥さんも、そこまでうどんを食べたかったわけではない。蕎麦を食べることにした。

広々とした店内だった。「いらっしゃいませ!」大きな声で迎え入れてくれたのはたぶん店長だろう。周りにいる店員さんとは貫禄が違う。店長自らが席を案内してくれた。
水とおしぼり、そしてメニューを差し出す動きに無駄がない。テキパキとしている。どこまでもシステマチックだ。「お決まりになりましたら、お呼びください」店長は颯爽と立ち去った。イケてる店長だ。

メニューを見る。いろいろな蕎麦が並ぶ。単品、丼ものとセット、温かい、冷たい、バリエーション豊かだ。オレは迷う。こういう時いつも迷う。自分の性格で直したいところの一つだ。その時、奥さんが突拍子もないことを言った。

「私、うどんにするわ」

いやいや、ここ蕎麦屋だから。もちろん、そばうどん、どちらも提供している店はよくある。だけどここは、どう見ても蕎麦専門店だ。言葉はちょっとおかしいが「かなり」の蕎麦専門店だ。
「うどん、ないでしょ」そう突っ込んだが、メニューに書いてあるという。

確かに※印で書いてあった。「※うどんに変更も可能です」って。正確な表記は忘れたけど。まぁ、そこまで大変なことでもないもんな。素人考えでアレだけど、麺を変えるだけだもんな。出来ない訳ないか。わざわざメニューに書いてあるんだから、うどんを求めるお客さんも多いのかもな。
ちなみに北海道はうどんより蕎麦の勢力が強いかな。何をもって勢力というのかわからないけど。オレはうどんを食べる方が多いけどね。どっちなんだよ。

とりあえずオレもメニューを決めて、店員さんを呼んだ。店長さんが颯爽と現れた。まず、オレが注文する。そして、奥さんがとあるメニューの写真を指差しながら言った。

「これ、うどんでお願いします」

あれだけテキパキと動いていた店長さんの動きが止まった。そしてゆっくりと奥さんの方に視線を動かして、小さな、ほんとうに小さな声でこう言った。

「うど・・ん?」

イケてる店長が大根役者になった瞬間だった。
それはB級ドラマで誰かの死を電話で伝えられた時、「しん・・だ?」と聞き返した時のように芝居がかった問い掛けだった。

どうやら、この店でうどんを注文する人は多くないらしい。いや、あの店長の反応を見るに「皆無」なのではないか。店長は狐につままれたような顔をして去っていった。首をかしげていたかもしれない。「蕎麦屋でうどん???」そんな心の声が聞こえてきた。

確かにメニューには「※うどんに変更も可能です」と書いてあった。書いてあったけどしかし、そこは「かなり」の蕎麦専門店だった。

パーティーの招待状に、いくら「服装自由です」と書かれていても、ステテコにランニングシャツ、麦わら帽子をかぶって行くのはご法度であるように、蕎麦専門店でうどんを注文するのはご法度なのかもしれない。

あたり・・まえ?


関連記事











スポンサーリンク


コメント

 コメント一覧 (6)

    • 1. pen
    • 2023年11月01日 09:18
    • 朝から笑わせていただきまして^^ 
    • 2. シブケン シブケン(管理人)
    • 2023年11月01日 10:42
    • penさん
      笑ってもらえるのが一番です!
    • 3. saka
    • 2023年11月05日 20:31
    • 5 小学生の頃、ストリートファイターⅡを発売日に並んで買いに行ったんだ。1時間くらい並んだ。そして私の順番になった。私は言った。「ミュータントタートルズ下さい」父、店員「ター       ト  ルズだと…」
    • 4. シブケン シブケン(管理人)
    • 2023年11月06日 13:54
    • sakaさん
      なぜにミュータントタートルズ(笑)
    • 5. えんちゃん
    • 2023年11月13日 21:28
    • 5 うどんの味がどうだったのか気になります。
    • 6. シブケン シブケン(管理人)
    • 2023年11月14日 14:35
    • えんちゃんさん
      奥さんに確認したところ「フツーにおいしかった」そうです(笑)
コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット