相手が初心者ランナーだったとしても、アドバイスやコーチングはそう簡単じゃない。
そう思ったのは、その初心者ランナーの質問がナナメ上をいっていたからだ。
まず、その初心者ランナーは「ランナー」と呼んでいいのかさえ疑問に思うほど走っていない人だ。
「超」がつく初心者ランナーだ。
「たまたま誘われたから、なんとなくマラソン大会に出てみた」そうだ。
聞けば、練習をほとんどしないままに大会に出てレースを走った、という。
一応、家の周りをちょろっとは走ったよ、とは言っていたけど。
話しぶりから、本当にちょっろだと思う。イメージ100mくらい(笑)
いや、それはそれで逆に度胸がスゴイと思う。
オレなんかランニングみたいな事を始めて2、3年は大会に出なかったからね。
市民マラソン大会のことをよく知らなかったのと、知った後もビビッていたのとで。
その超初心者ランナーは、見た目、とてもスポーツをやりそうには見えない女性だ。
昔は部活でスポーツをやっていたようだが、それ以来何もせずに40代を迎えている。
オレがマラソンをやっていることは知っているからだろう、「そういえば」的に質問されたんだ。
「この前、大会に出たんだけどさ」って。
「レースの後半、ヒザが痛くて走れなくなったんだけど原因はなにかな?」
オレは全力で、そしてできるだけベターな、もしくはベストなアドバイスをしたいと思った。
オレが人にアドバイスできるレベルのエリートランナーではないことは。
でも、だからこそ、超初心者ランナーによりよいアドバイスができる部分があると思うんだ。
エリートランナーが経験しない様な初歩的なトラブルなんかを、オレも痛いほど味わっているからだ(笑)
「レースでヒザを痛める」
はいはい、何度も経験してますよ、ってなトラブルだ。
レースの次の日、あまりのヒザの痛みに地下鉄の駅の階段を降りられなくなった、なんてことはよくあった。
エレベーター、エスカレーターの有難さが身にしみた。バリアフリー万歳!と叫びたくなったものだ。
「レースでヒザを痛める」なんて、全然ナナメ上の質問じゃねーだろ、そう思うかもしれない。
そうなんだ、この質問自体はそうなんだ。よくあるトラブルだ。
なんだけど、レースの詳細を聞いていくと、そのチャレンジングな内容がナナメ上なんだ。
できるだけベターな、もしくはベストなアドバイスをするためには基本情報を知る必要がある。
オレはレースについていろいろ聞いてみた。去年走ったレースとのことだが。
ビリっけつ、だったという。
「最後の方」という意味ではなく、正真正銘の最下位だったというんだ。
しかも断トツの。
とんだ逸材が近くにいたもんだ(笑)
やっぱりその度胸がスゴイ。途中棄権しないでビリっけつでゴール。
なっかなか獲れない?でしょ、ビリっけつ。
そして、ゴール間際でとんでもないことが起こったという。
マイクを持ったアナウンサーが近付いてきて場内放送で、その模様を実況したというんだ。
「奥様がヒザを痛めながら、懸命にゴールを目指しています!!」
とかなんとか。そうそう、夫婦で大会に出たんだって。
オレなら死んでるわ(笑)恥ずかしさのあまり死んでるわ。
一目散にその場から逃げ出すわ。
ヒザが痛くて逃げられないけどね。
やかましいわ。
その話を聞いて、少し疑問に思う。
そんな断トツビリっけつのレースなら、それほどスピードも出してないだろうにヒザを痛めるか?って。
まぁ、ヒザを痛めたから遅くなったって話かもしれないが。
さらに詳しく聞いてみる必要がある。
その超初心者ランナーは驚きの答えを連発する。
まず、走ったというレースだ。
オレの知らないレースだった。
オレと同じく、北海道は札幌に住んでいる超初心者ランナーだ。
初めて出るレースといえば、だいたい決まってくる。
聞いたこともないレースだった。
おかしい。オレは北海道のマラソン大会については、ある程度詳しいと思う。
出たことがなくったって、聞いたことはあるはずだ。
聞いたこともないレースだった。
オレは正直に言った。「知らないな、それ」
ここでオレの信用度はワンランク下がったかもしれない。
「マラソンに詳しい人」から「マラソンにあまり詳しくない人」にランクダウンしたかもしれない。
まぁ、いい。そんなこともあるだろう。北海道のマラソン大会について詳しいと思っているとはいえ、全部完璧に知っているわけではないのだから。
次いこ、つぎ。次の質問だ。
一番の問題は距離だからな、距離。
一体何キロ走ってヒザを痛めたのか。そりゃあ普段走っていない人が、いきなり長い距離を走ったらヒザも痛めるってもんだ。
でも、2キロとか3キロとかだろ、超初心者ランナーなんだから。
せいぜいがんばっても5キロってとこだろう。
「10マイルだったかな」
マイルときた。
超初心者ランナーが口にする距離の単位じゃない。
そして10マイルといえば、約16キロ。なかなかの距離だ。
それにしても、距離のマイル表示。
通常の国内ロードレースでマイル表示はあまり見ない。
何かがおかしい。
「でね、コースの起伏がすごくて大変だったんだ。けっこう山の中走るって感じで。」
「山?!」
「うん、山。トレイルなんとかっていったかな」
「トレイルラン!」
チャレンジングにも程があるだろ。

聞いたことがないはずだ。オレもトレイルランの大会までは情報をカバーしていない。
家の周りを100mくらいしか走ったことのない超初心者ランナーが初レースで10マイルのトレイルランを走る。
ナナメ上すぎるだろ。
そしてヒザを痛めた。
それに対する、できるだけベターな、もしくはベストなアドバイスとはなんだ。
オレにはわからない。
なぜなら、オレは10マイルのトレイルランの経験がないからだ。
いや、たぶんコースの起伏にやられたとは思うよ、ヒザ。
オレもコースの起伏が激しめのロードレースでヒザを痛めたことがあるから。
通常のコースだったら、そんなこともなくなってた時期に。
起伏はヒザにくる。
これは経験上間違いない。オレが導き出した対処法は上りと下りのフォームを変えるということだ。
上りは歩幅を小さく、気持ちピッチ走法で。下りは歩幅を大きくダイナミックに。
基本、「坂はがんばらない」をモットーに。
でも、超初心者ランナーに、今の段階でそれを言ってもよくわからないと思う。
そもそも、通常の自分の歩幅だってよくわかっていないと思う(笑)
オレのアドバイスは一言に終わった。
「レースの後半、ヒザが痛くて走れなくなったんだけど原因はなにかな?」
「フォームだね」
「フォーム?」
「うん、フォーム」
「フォームかー」
「うん、フォーム」
これがオレのできるだけベターな、もしくはベストなアドバイスだ。
彼女はそれ以上なにも聞いてこなかった。
聞いてもわからないと思ったのか、「マラソンにあまり詳しくない人」の話を聞いても無駄だと思ったのか、もうマラソンを走る気が無いのかは知らない。
でも、とにかくビリっけつでゴールしたのはスゴイと思った。
そして、マラソンを続けてほしいなと思った。
ためになるアドバイスはできないと思うけど。
そう思ったのは、その初心者ランナーの質問がナナメ上をいっていたからだ。
まず、その初心者ランナーは「ランナー」と呼んでいいのかさえ疑問に思うほど走っていない人だ。
「超」がつく初心者ランナーだ。
「たまたま誘われたから、なんとなくマラソン大会に出てみた」そうだ。
聞けば、練習をほとんどしないままに大会に出てレースを走った、という。
一応、家の周りをちょろっとは走ったよ、とは言っていたけど。
話しぶりから、本当にちょっろだと思う。イメージ100mくらい(笑)
いや、それはそれで逆に度胸がスゴイと思う。
オレなんかランニングみたいな事を始めて2、3年は大会に出なかったからね。
市民マラソン大会のことをよく知らなかったのと、知った後もビビッていたのとで。
その超初心者ランナーは、見た目、とてもスポーツをやりそうには見えない女性だ。
昔は部活でスポーツをやっていたようだが、それ以来何もせずに40代を迎えている。
オレがマラソンをやっていることは知っているからだろう、「そういえば」的に質問されたんだ。
「この前、大会に出たんだけどさ」って。
「レースの後半、ヒザが痛くて走れなくなったんだけど原因はなにかな?」
オレは全力で、そしてできるだけベターな、もしくはベストなアドバイスをしたいと思った。
自分の経験からアドバイスはできるはず
わかっている。オレが人にアドバイスできるレベルのエリートランナーではないことは。
でも、だからこそ、超初心者ランナーによりよいアドバイスができる部分があると思うんだ。
エリートランナーが経験しない様な初歩的なトラブルなんかを、オレも痛いほど味わっているからだ(笑)
「レースでヒザを痛める」
はいはい、何度も経験してますよ、ってなトラブルだ。
レースの次の日、あまりのヒザの痛みに地下鉄の駅の階段を降りられなくなった、なんてことはよくあった。
エレベーター、エスカレーターの有難さが身にしみた。バリアフリー万歳!と叫びたくなったものだ。
「レースでヒザを痛める」なんて、全然ナナメ上の質問じゃねーだろ、そう思うかもしれない。
そうなんだ、この質問自体はそうなんだ。よくあるトラブルだ。
なんだけど、レースの詳細を聞いていくと、そのチャレンジングな内容がナナメ上なんだ。
できるだけベターな、もしくはベストなアドバイスをするためには基本情報を知る必要がある。
オレはレースについていろいろ聞いてみた。去年走ったレースとのことだが。
ナナメ上のレース
まず驚いたのが、そのレース結果だ。ビリっけつ、だったという。
「最後の方」という意味ではなく、正真正銘の最下位だったというんだ。
しかも断トツの。
とんだ逸材が近くにいたもんだ(笑)
やっぱりその度胸がスゴイ。途中棄権しないでビリっけつでゴール。
なっかなか獲れない?でしょ、ビリっけつ。
そして、ゴール間際でとんでもないことが起こったという。
マイクを持ったアナウンサーが近付いてきて場内放送で、その模様を実況したというんだ。
「奥様がヒザを痛めながら、懸命にゴールを目指しています!!」
とかなんとか。そうそう、夫婦で大会に出たんだって。
オレなら死んでるわ(笑)恥ずかしさのあまり死んでるわ。
一目散にその場から逃げ出すわ。
ヒザが痛くて逃げられないけどね。
やかましいわ。
その話を聞いて、少し疑問に思う。
そんな断トツビリっけつのレースなら、それほどスピードも出してないだろうにヒザを痛めるか?って。
まぁ、ヒザを痛めたから遅くなったって話かもしれないが。
さらに詳しく聞いてみる必要がある。
その超初心者ランナーは驚きの答えを連発する。
まず、走ったというレースだ。
オレの知らないレースだった。
オレと同じく、北海道は札幌に住んでいる超初心者ランナーだ。
初めて出るレースといえば、だいたい決まってくる。
聞いたこともないレースだった。
おかしい。オレは北海道のマラソン大会については、ある程度詳しいと思う。
出たことがなくったって、聞いたことはあるはずだ。
聞いたこともないレースだった。
オレは正直に言った。「知らないな、それ」
ここでオレの信用度はワンランク下がったかもしれない。
「マラソンに詳しい人」から「マラソンにあまり詳しくない人」にランクダウンしたかもしれない。
まぁ、いい。そんなこともあるだろう。北海道のマラソン大会について詳しいと思っているとはいえ、全部完璧に知っているわけではないのだから。
次いこ、つぎ。次の質問だ。
一番の問題は距離だからな、距離。
一体何キロ走ってヒザを痛めたのか。そりゃあ普段走っていない人が、いきなり長い距離を走ったらヒザも痛めるってもんだ。
でも、2キロとか3キロとかだろ、超初心者ランナーなんだから。
せいぜいがんばっても5キロってとこだろう。
「10マイルだったかな」
マイルときた。
超初心者ランナーが口にする距離の単位じゃない。
そして10マイルといえば、約16キロ。なかなかの距離だ。
それにしても、距離のマイル表示。
通常の国内ロードレースでマイル表示はあまり見ない。
何かがおかしい。
「でね、コースの起伏がすごくて大変だったんだ。けっこう山の中走るって感じで。」
「山?!」
「うん、山。トレイルなんとかっていったかな」
「トレイルラン!」
チャレンジングにも程があるだろ。

聞いたことがないはずだ。オレもトレイルランの大会までは情報をカバーしていない。
家の周りを100mくらいしか走ったことのない超初心者ランナーが初レースで10マイルのトレイルランを走る。
ナナメ上すぎるだろ。
そしてヒザを痛めた。
それに対する、できるだけベターな、もしくはベストなアドバイスとはなんだ。
オレにはわからない。
なぜなら、オレは10マイルのトレイルランの経験がないからだ。
いや、たぶんコースの起伏にやられたとは思うよ、ヒザ。
オレもコースの起伏が激しめのロードレースでヒザを痛めたことがあるから。
通常のコースだったら、そんなこともなくなってた時期に。
起伏はヒザにくる。
これは経験上間違いない。オレが導き出した対処法は上りと下りのフォームを変えるということだ。
上りは歩幅を小さく、気持ちピッチ走法で。下りは歩幅を大きくダイナミックに。
基本、「坂はがんばらない」をモットーに。
でも、超初心者ランナーに、今の段階でそれを言ってもよくわからないと思う。
そもそも、通常の自分の歩幅だってよくわかっていないと思う(笑)
オレのアドバイスは一言に終わった。
「レースの後半、ヒザが痛くて走れなくなったんだけど原因はなにかな?」
「フォームだね」
「フォーム?」
「うん、フォーム」
「フォームかー」
「うん、フォーム」
これがオレのできるだけベターな、もしくはベストなアドバイスだ。
彼女はそれ以上なにも聞いてこなかった。
聞いてもわからないと思ったのか、「マラソンにあまり詳しくない人」の話を聞いても無駄だと思ったのか、もうマラソンを走る気が無いのかは知らない。
でも、とにかくビリっけつでゴールしたのはスゴイと思った。
そして、マラソンを続けてほしいなと思った。
ためになるアドバイスはできないと思うけど。
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